〜テイルズ・オブ・ザ・ソードコースト〜 | ||||||||||||
〜デューラッグの塔〜 | ||||||||||||
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薄気味悪い塔だ・・・。その印象は以前見たときと少しも変わらない。でも私はここにやってきた。これから立ち向かう相手との決戦を前に、少しでも力をつけておきたい。この塔には財宝もたくさん眠っていると言われているが、それを狙ってやってきた者達が死んでなお財宝を求めて塔の中を徘徊していると聞く。死者のあるところには、必ず魔物が集う。ウルゴスビアードでこのツァーに参加したことのある人物に話を聞いたが、塔内探索と言っても結局安全が約束された観光ツァーの域を出ないらしい。普段人が立ち入らないフロアには、何がいるかわかったものではないのだ。
塔の近くにはなんと店がある。多少の武器やポーションなどはここで買えるらしい。もっともかなり高い。ここからならナシュケルはそう遠くないので、出来るだけここは利用しないですませたいものだ。
「さっそく妙な気配よ。」
ブランウェンが塔へと続く道の先を睨んで呟いた。
「腕試しの機会には事欠かないというわけか。まあこれだけ異様な場所だ。何が集まってきていてもおかしくないのぉ。」
クレリックというものは、邪悪なものには敏感らしい。私は本当に邪悪ではないのか、イェスリックはああ言ってくれたけれど、今でも自分の中で答えは出ていない。バールとて神なのだから、その神に仕えるクレリックがいるはずだが、バールの神殿など見たこともない。そう言えば、確かフレンドリーアームインは元はバールの神殿だったと聞いた。ベントリー・ミラーシェード達が攻撃して奪ったのだとか。ベントリーの奥さんはグリッダーゴールド神のクレリックだったっけ・・・。
邪悪な神に仕えるクレリックはともかく、街の神殿にいるクレリック達、そしてここにいるブランウェンやイェスリック。みんな悪を見抜く力を持っているのだとしたら、クレリックとして生きていけたら、あるいは私も救われるのだろうか。血の導きによって悪の道に踏み込んだりするかもしれないと、恐れなくてもいいのだろうか・・・。
道の途中にいたのは、なんとバトルホラー。外にこんな連中がうろうろしているというのに、あのイケという男はよく観光ツァーなど企画したものだ。なんとか倒してやっとのことで塔にたどり着いたところに、イケが待っていた。
「あんた達が一番最後だぞ!まったく、これ以上は待たずに入るつもりだったんだ!でないと次のツァーに間に合わなくなってしまう!」
いきなり怒鳴りつけられた。いい気なもんだ。人の気も知らないで。だが、この男の頭の中は、金勘定でいっぱいらしい。何を言っても無駄な気がする。議論をあきらめて、私達はイケのあとについてデューラッグの塔に入っていった。まさかこのあとあんなことになるとは、この時の私達には想像もつかないことだった・・・・。
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いったい何が起きたのか、さっぱりわからない。でもこれだけは理解できる。デューラッグの塔にデーモンナイトが現れ、観光客とイケを殺したこと。いかにも金の亡者らしい嫌な奴だったが、少なくとも、悪魔に殺されるほど悪いことをしていたとも思えない。
「よりによってまた飛んでもない奴が現れたもんじゃ・・・。」
イェスリックが呟いた。彼だけではなく、私も含めてみんな、あまりにも突然の出来事に驚きすぎて、しばらくの間、ただ口をあけているだけだった。だが、少しずつ事態を把握できてくると、今度は猛烈に腹が立ってきた。冗談じゃない!このままおめおめと引き下がるなど、考えたくもない!
「しかし腹の立つ話ね。」
イモエンは完全に怒っている。
「せっかくのご招待だ、受けてみるのも悪くないと思うが。」
めずらしく挑戦的なつぶやきをしたのはカイヴァンだ。
「ふむ、それはいいが、奴はどうも地下に逃げ込んだらしいぞ?わしも聞いたことがあるだけだが、ここの地下は地上の階とは比べものにならないくらい複雑な迷宮になっているらしい。わしは元々洞窟に住んでいたから気にもならんが、お前さん方エルフに、穴倉の行軍など耐えられるかのぉ。」
「あまり気分の良いものではないが、冒険のためならば私は我慢できるな。」
コランの基準は「冒険が出来るかどうか」のみらしい。
「そのくらいは我慢しよう。あのイケという男も、観光客も、なんのいわれもなくただ殺されたのだ。仇くらいはとってやろうではないか。」
「賛成よ。それに、あんな邪悪の塊のようなもの、この地にのさばらせておけないわよ。」
ブランウェンも乗り気だ。メイスをブンブン振り回している。
「決まりね。それじゃ一度ナシュケルに戻って、装備を整え直しましょう。あんな奴を相手にするなら、それなりに準備が必要だわ。」
まさかデーモンを相手にすることになろうとは思わなかったが、ここまで関わってしまったのだ。何が何でも討ち果たしてやる。心配なのは、冒険者にあこがれてこの塔の探索に加わったというウルゴスビアードの若者のことだ。ここに来ることがあれば探してあげるわと母親に約束してきたが、あんな物騒なものが徘徊しているこの塔の地下で、果たして無事でいるのだろうか・・・。
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地下に降りた私達は、壁際で震えている男に出会った。ベイヤードと名乗ったその男は、どうやら私達のように、この塔の探索に来たらしい。だが、このダンジョンに仕掛けられている恐ろしい罠やモンスターに恐れをなして、逃げてきたというのだ。しかも仲間を残して。その仲間が、ウルゴスビアードの若者ダルトンだと聞いて驚いた。やはりあの若者はここまで来ていた。仲間とともに首尾よく地下に入り込んだはいいが、自分達にはとうてい手にあまる仕掛けに恐れをなした仲間は散り散りになり、ベイヤードは運良く入口までたどり着けたが、他の仲間についてはまったくわからないということだった。
「ふん!デューラッグは頭がイカレていたともっぱらの噂だった。そんな奴の作ったダンジョンを、生半可な気持で踏破できると思うほうが間違っとるわい!」
イェスリックが腹立たしげに言った。私もその意見に賛成だ。確かに上の階にはそれほどたいしたものはなかったが、仕掛けられている罠はどれもこれも悪意に満ちていた。その遙か上を行くと言われるこの地下の仕掛けを、甘く見るほど私達はバカではないつもりだが、いっそう慎重に進もうと言い合って、私達は次の階へと降りていった。
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