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 工事現場では、もう人夫達がいつもの仕事に戻っているようだった。建材を担ぎ上げて運び出す人夫達が行き交い、指示を出している人夫頭らしい男達が何人かの人夫達と、あちこちで話をしたりせわしなく動き回ったりしている。この資材置き場はかなり広いが、モーガン医師が発見された現場は廃材置き場だと聞いた。グラディス達もその場所は知っている。そこはこの広場の中でも隅のほうに位置し、背の高い頑丈な柵がめぐらされていた。そこに王国剣士が一組、立っている。
 
 
「あれ、どうしたんだお前ら。」
 
 立っていたのは先輩剣士だった。グラディスとガウディはパーシバルとヒューイを手伝うよう剣士団長から指示があったことを伝え、現場を見せてくれるように頼んだ。
 
「なるほどな。確かにパーシバルさん達はいろいろ案件を抱えているからな。2人とも城下町内での仕事は基本別行動だからそれぞれ個別に抱えているし、この上殺人事件なんて、体がいくつあっても足りゃしないよな。」
 
「パーシバルさん達もそろそろ来ると思います。先に現場を見せてもらっていいですか?」
 
「ああ、いいぞ。だが、その辺にあるものにはまだ触るなよ。それはパーシバルさん達が来てからにしろ。」
 
「はい。」
 
 死体がはまっていたらしい場所の脇に、廃材が積み上げられている。
 
「廃材置き場なんだから隅っこにあるのはわかるが・・・こんなところに死体を置いたりしたら、そりゃ見つからないだろうなあ。」
 
 グラディスが廃材置き場を見渡してため息をついた。この場所だけにめぐらされている背の高い柵は、そこそこ頑丈に作られている。
乱雑に置いた廃材が万一崩れても、囲いの外まで崩れ落ちるのを防ぐためだと、以前このあたりを見回りしていた時に人夫から聞いたことがあった。
 
「見つからないからこそ犯人はここに隠したんだろう。しかし、この広場はどこからでも出入りできるわけじゃないからな。ここに死体を運んでくるなら、広場を突っ切らないと来れないよな・・・。」
 
 ガウディは自分達がここに来るまでに通った道を振り返った。今城下町の中心街は東寄りの場所にある。王宮からまっすぐ伸びた太い道路を挟んで、西側には住宅が少しあるくらいで、店などはあまりなかった。この広場に来るためにはみんな東側から歩いてくる。それなりに時間もかかる。
 
「殺害現場はこことは違うってことかもしれんが、それが必ずしも東側とは限らないじゃないか。」
 
 この広場のさらに西側にも住宅は建設される予定だが、そのあたりは夕方工事の仕事が終わると、人の気配はほとんどなくなる。良からぬ企みを実行するにはもってこいの場所になるわけだ。
 
「まあそうなんだが・・・。それはパーシバルさんに聞いてみるか。ある程度の当たりはついているだろうからな。」
 
「そうだな。あんまり先走らないようにしよう。まあどこで殺されたにせよ、手が腐敗で千切れていたって話だから、隠されてからそれなりに時間が過ぎているということか・・・。」
 
 さっきの剣士団長室では、どちらかと言うとヒューイの『特殊任務』の話が中心だったので、モーガン医師についての話はほとんど聞けなかった。パーシバル達が来れば現場検証についても説明はしてもらえるはずだが、だからと言って彼らが来るまでここでボケっと突っ立っていたりしたら、何をやっていたんだとヒューイにどやされそうだ。2人が来た時に、説明を聞きながらある程度質問が出来るよう、考えておかなければならない。グラディスとガウディにとって、パーシバルとヒューイは尊敬する先輩だ。いつも忙しい彼らと一緒に仕事が出来る機会などなかなかない。その尊敬する先輩に、それでなくとも迷惑をかけっぱなしだというのに、この上ろくな仕事も出来ない情けない奴らだと思われたくはない。
 
「・・・しかし、ここにすっぽりはまっていたとしたら、犯人はモーガン先生の死体を傷つける気はなかったってことだよな・・・。」
 
「そうだな・・・。パーシバルさんとドゥルーガー先生がすぐにモーガン先生だと分かったらしいから、顔はきれいだったんだろう。」
 
「顔はきれいだったぞ。」
 
 この場所の見張りに立っている先輩剣士が言った。
 
「モーガン先生の死体は見たんですか。」
 
「ああ・・・運び出す時にちらっとだけどな。だが、すぐにモーガン先生だと分かるくらい、顔には傷もなかった。なんでこんなことになっちまったんだか・・・。」
 
 先輩剣士がため息をついた。
 
「つまり顔を潰して身元不明を装う気はなかったってことですかね。」
 
「だと思うぞ。それともそれだけの時間的余裕がなかったか、だな。ま、パーシバルさんは死体が見つかってからずっと調べていたんだから、そのあたりは詳しく聞けるだろう。」
 
「はい、ありがとうございます。」
 
 先輩剣士はやりきれなさそうに顔をゆがめ、見張りの仕事に戻った。モーガン医師の死は、誰にとっても悔しく、そしてやりきれないくらい悲しいことなのだ。そんな人物がなぜ殺されなければならなかったのか・・・。
 
「なあグラディス、ここの廃材、死体を隠すために動かしたんじゃないか?」
 
 ガウディが言った。
 
「・・・動かした?」
 
「ああ。確かにここは死体を隠すにはもってこいの場所だが、ここの廃材は相当乱雑に積み上げられているって話は俺も以前聞いたことがある。それなのに死体を運んできた時、ここがそううまく空いているってのは変な話じゃないか。死体が収まるようにここをわざわざ空けたんじゃないか?」
 
 死体が隠されていたと思われる場所は、人間一人ならなるほどすっぽりと収まりそうなくらいの空間が空いている。だがここは元々廃材置き場だ。使う当てのないものを、手間と時間をかけて美しく並べようなんて誰も考えないだろう。だからこそこの場所だけ、柵で囲われているのだ。
 
「なるほどな・・・。ある程度置きやすいように廃材を動かしたってことか・・・。となると、人目に付かないどこかの場所で殺して、すぐにここに死体を運んできて廃材を動かし、隠したってことか。まさか白昼堂々そんなことは出来ないだろうから、夜だろうな。」
 
「しかも明かりをつけて死体隠しってわけにもいかないだろうから、闇の中で急いで隠そうとした、ところが手が出ていたことに気づかなかった、そんなところかな。」
 
「手だけが出ていた理由としてはそんなところか。それにしても・・・。」
 
 ふいにグラディスが黙った。
 
「どうした?」
 
「なあ、この廃材だが、どう見ても相当重そうなんだよな。これ、単独犯だと思うか?」
 
「確かに・・・殺人自体は1人で出来るとしても、1人で死体をここまで運んできて、廃材を動かして、となると・・・。」
 
「複数犯の犯行と考えた方がいいような気がするよな・・・。」
 
「そうだな・・・。」
 
 となると話は変わってくるのではないか・・・。モーガン医師が実に評判のいい医師だというのは、さっき食堂にいた時に先輩達から教えてもらった。腕の良さもさることながら医師会内部でもかなり慕われていたらしく、人望も厚かったそうだ。いずれは主席医師になり、そして医師会長となるのではないかと言われていたほどの人物らしい。実際ここで見張りに立っている先輩剣士だって、さっきとてもやりきれなさそうな顔をしていた。
 
「そう言う人がいると、必ずと言っていいほどやっかんで悪巧みをしかける奴ってのが出てくるもんだよな・・・。」
 
「つまり医師会内部に何か揉め事があったんじゃないかってことか?」
 
「あくまで可能性だがな。俺は医師会の内部事情なんて知らないが、まあそんな話があったとしてもおかしくはないだろうなってことさ。」
 
「そうだな・・・。モーガン先生がそれほどの人物なら、有り得なくはない話だ・・・。」
 
 
 
 
 
「もう来てるのかな。」
 
 資材置き場となっている広場に着いて、ヒューイが言った。
 
「うーん・・・あそこはここからだとよく見えないんだよな。柵があるし。行ってみるか。」
 
 パーシバルとヒューイはモーガン医師の死体発見現場に向かった。そこにはパーシバル達より何年か後に入った剣士が一組、見張り番をしていた。さっき死体を運び出す時に応援に駆け付けた剣士達だ。その後ろで、死体の発見現場を覗きこみながら思案顔でいるのはグラディスとガウディだ。
 
「どうだ、何か気がついたことがあったか?」
 
 パーシバルが尋ねた。
 
「はい、少しは・・・。」
 
 そういうグラディスもガウディも自信なさげだ。
 
「それじゃ話をする前に、ここの監督官に紹介するよ。」
 
 パーシバル達は4人で廃材置き場から出た。そこにいた王国剣士2人は、今日夕方までここで見張りを続けるとのことだった。夜は夜で、急きょ3組ほど見張りがつくことになったらしい。
 
「そうだな・・・。しばらくは見張りが必要か・・・。」
 
 現場検証は一通り終わったので、本来ならば証拠品などはすべて王宮に持って行くことになるのだが、死体を覆っていた重い廃材など、すぐには動かせないものが多い。しばらくは犯人が戻ってくる可能性を考え、警備を手厚くするということらしい。
 
「普段ならこのあたりの見回りもほとんどいませんからね。でも人がいないからと手薄なままにしておいたのはよくなかったと思うので、これからはもう少し頻繁にこのあたりを見回ろうと思います。」
 
「ああ、よろしく頼むよ。」
 
 
 資材置き場の中心に近い場所には、今朝と同じくホルムが立っている。今は人夫頭らしい男達に何か指示をしているところだった。その中にエイベックがいることに、パーシバルは気づいた。そして、その後ろにいるグラディスとガウディも、見知った顔があることに気づいていた。
 
(そういやあのおっさんの人夫頭の仕事ってのはここの現場だったっけ・・・。)
 
 エイベックはホルムの言葉に時折頷いてはメモを取っている。あの時周旋屋が言っていた通り、まじめな人物なのだろう。この男の子供は、あれからどうしただろう。父親が真面目に働いていれば、毎日金が入る。きっと父親が帰ってくるのを毎日楽しみに待っていることだろう。そんなことを考えているグラディスの隣で、ガウディは苦々しい思いでエイベックを見ていた。この男がこうしてまじめに働いているのを見るのはうれしいものだが、彼の顔を見ると、どうしても隣人レイラの厳しい目を思い出してしまうからだ。
 
「・・・こんなことがあってみんな動揺していると思う。何とか君達にうまくなだめてほしいんだ。工事が遅れるのも困るが、休まれてしまうと給金も引かなくちゃならなくなるからね。」
 
 そんな声が聞こえてくる。仕事が滞って困るのは監督官のはずだが、ホルムはなんだか申し訳なさそうに話をしていた。
 
「俺達は固定給だから、安いなりに収入は安定しているが、一日単位で給金を計算されるってのは大変だなあ。」
 
 ヒューイが小さな声で言った。
 
「そうだな・・・。お前の仕事はかなり重要だってことさ。」
 
 パーシバルも小さな声で答えた。
 
「ま、何とか頑張るか。」
 
 やがてホルムの話が終わり、人夫頭達はそれぞれの持ち場に戻って行った。エイベックはグラディス達に気づいていないらしい。グラディス達もあえて声はかけなかった。知り合った経緯を考えれば、彼が自分達の顔なんて見たくもないと思っている可能性もあるし、何よりここは彼の職場だ。どれほどバカ正直な人間でも、自分を泥棒として捕まえた王国剣士になんて、ここで会いたくないだろうと思ったのだ。
 
「行くぞ。」
 
 パーシバルに促され、グラディス達はホルムに紹介してもらった。
 
「そういえばこのあたりを見回ってくれていたことが何度かあるね。よろしく頼むよ。あんなことがあって人夫達は動揺している。でも何とか毎日仕事には来てもらわないとね。ただでさえ生活が苦しいらしいから、給金を差し引くのは出来るだけ避けたいからね。」
 
「人夫達の給料ってのはそんなに安いんですか?」
 
 ヒューイが尋ねた。せっかく人夫達の給料について話が出たのだ。ここで尋ねない方が不自然だろう。ホルムは困ったような顔をしたが、『まあ君達になら話してもいいかな』と言って話してくれた。それによると、人夫達の給料は本人達に直接手渡されるわけではなく、ホルム達のような監督官がその日毎に勤怠をまとめて、それに基づいて王宮から周旋屋達に支払われるとのことだ。そして周旋屋達は自分達が予め決めておいた手数料を差し引いて、人夫に給料を支払うと言う仕組みになっている。ところが、王宮から支払われる金額はずっと変わっていないのに、人夫達が手にする給料が少しずつ減っているというのだ。しかも、周旋屋によって手数料が違うと言う事態が起きている。
 
「・・・この景気を当て込んで地方から稼ぎに来ている人達も多いというのに、手数料ばかりつり上げられては彼らが気の毒だ。それで、少し前に我々監督官からの報告書として、この事態を調査してくれるよう、行政局に提出はしてあるんだよ。周旋屋達だって手数料しか収入がない、それは理解出来るが、今の状態では周旋屋の懐ばかり温かくなって、人夫達の生活は日に日に苦しくなっている。それはおかしな話だからね。」
 
「今周旋屋達を束ねているのは誰なんですか?ガルガスさんが亡くなってから、新しい組合長が決まったという話は聞いてませんが。」
 
「それがねぇ・・・。」
 
 ホルムがため息をついた。
 
「未だに決まっていないんだよ。ガルガスさんはやり手だったし、彼の後釜に座るのはなかなか勇気が要ると思うが・・・。だが誰もまとめ役がいないというのは困るからと、今のところは『組合長代行』としてダゴスという男が就いているよ。確か元々はクロンファンラに事務所を構えていたらしい。実直な男だから彼が組合長になってもいいのではないかと思うんだが、本人が固辞していてね。」
 
「周旋屋達がここに来ることはあるんですか?」
 
「毎日来るよ。給料は日払いだからね。私達がまとめたその日の勤怠の一覧を持って、行政局の担当部署にお金をもらいに行くんだよ。そうだなあ・・・。人夫達に支払うのは夕方仕事が終わってからだから、それまでに支払いの準備をしなくちゃならないからね。もう少ししたら来ると思うよ。ただ・・・今日来るのがダゴスかどうかまでは私も分からないなあ。大抵誰かが一人で来て、ほかの周旋屋達の分まで書類を持っていくからね。」
 
「そうですか・・・。それと、さっき死体を発見した人夫には会えますか。」
 
「ああ、今休憩してもらってる。だいぶ動揺はしていたが、そろそろ落ち着いたかもしれないな。救護室にいるから入っても構わないよ。私は今日の分の勤怠の書類を準備しなくちゃならないから、事務所に戻るよ。何かあれば声をかけてくれ。」
 
 ホルムはそう言って、広場の隅にある掘立小屋のような事務所に向かって歩いて行った。その一角にはほかにも建物が並んでいた。休憩所や救護室がそこにある。
 
「せっかくだから周旋屋に話を聞きたいな。」
 
 ヒューイが言った。今日は4人とも、夕方までここでの調査に充てる予定でいる。誰が来るかはわからないが、とりあえずこれから来るという周旋屋に会って話を聞いてみようということになった。
 
「さて・・・どうするかな・・・。」
 
 ヒューイはしばらく考えていたが・・・。
 
「なあグラディス、ガウディ、お前らが話を聞いてくれないか。」
 
 ヒューイが言った。
 
「え、俺達がですか・・・。」
 
 いきなり言われ、2人とも及び腰だ。
 
「ああ、俺もパーシバルも周旋屋とは顔見知りだからな。別に隠れている必要はないにしても、変に警戒されるとあとの仕事が面倒になりそうだしな。何と言っても俺達は有名人だそうだからな。」
 
 ヒューイが大げさに肩をすくめてみせた。
 
「冗談を言ってる場合か。だが・・・そうだな、俺達が雁首揃えて話を聞かせろと言うよりは、お前達のほうが警戒心を抱かせにくいかもしれないな。」
 
 パーシバルも言った。
 
「でも・・・何を聞けば・・・。」
 
「ここで殺しがあったことは多分もう知っているだろうから、そのあたりから話を持っていけばいいんじゃないか。間違ってもいきなり『手数料が上がってるのはなんでだ』なんて聞くなよ。」
 
「そ、そりゃ・・・そんな事は聞きませんけど・・・。」
 
「じゃ、任せた。パーシバル、その死体を見つけた人夫に話を聞きに行こうぜ。」
 
 ヒューイとパーシバルはさっさと救護室に行ってしまった。
 
「それじゃ俺達は事務室に行くか・・・。」
 
 あきらめたような口調でグラディスが言った。
 
「ああ・・・その周旋屋は事務室に来るんだろうからな。」
 
「・・・しかし責任重大だぞ?」
 
「それはそうだが、いやだとは言えないだろう。」
 
「そうなんだよなあ・・・。」
 
 2人ともため息をつきながら、事務室に入った。ホルムはもう大量の書類を机の上に出して仕事をしている。2人はホルムに、これからやってくる周旋屋に話を聞きたいのだがと頼んだ。
 
「ああ、構わないよ。ただ、ここで死体が発見されたことはもう知っているだろうから、あまり不安がらせるようなことは言わないでくれるかい?君達のような王国剣士だってそうそう死体にお目にかかるなんてことはないだろうに、ましてや我々一般人は、そこに死体があったなんて聞いただけで震え上がるのが普通だからね。私も未だにドキドキしてるよ。」
 
「わかりました。」
 
 その周旋屋が来るまでにまだ少し時間があると聞いて、グラディス達は外に出た。それまでにもう一度現場を見ておこうかと考えたのだ。
 
「あれ?あなた達は・・・。」
 
 声に振り向くと、なんとそこに立っていたのはエイベックだった。しまったと思ったがもう遅い。こんなに間近で顔を合わせてからそっぽを向いたりしたらかえって変に思われる。だが、エイベックのほうは笑顔で近づいてきた。少なくとも『嫌な奴に会った』なんてまったく思ってないように見える。
 
「やっぱり・・・その節はお世話になりました。」
 
 エイベックは丁寧に頭を下げた。対するグラディスとガウディは複雑だ。いくら自業自得とは言え、自分を捕まえた相手に向かってこんなに丁寧に接するなんて、またこの男はここでばかにされているんじゃないだろうかと心配になってくる。
 
「い・・・いや、あんたも頑張っているようで何よりだな。息子さんは元気なのかい?」
 
 工事現場の人夫頭に接するにしては、我ながら横柄な態度だとグラディスは思っていたが、この男と初めて会った時、彼は服役中の囚人だった。あの時横柄な態度を取っていたのに、ここでいきなり敬語など使ったりするのもわざとらしいと、とっさに考えた結果だった。だがエイベックはその態度に怒るどころか、2人にもう一度頭を下げた。
 
「ええ、元気です。私が帰るのを毎日待っていてくれます。家に帰ったら2人で夕食を作るんですよ。もう毎日賑やかです。・・・そんな生活が出来るのも、みんなお2人のおかげです。本当にありがとうございました。」
 
「そ・・・うか。良かったな。ホルムさんがあんたのことを言っていたよ。真面目でいい人材だって。ここに来てまだそんなに過ぎないのに、すごいんだな。」
 
「・・・私は真面目なのだけが取り柄ですからね。力が強いわけでもない、体格だって他の人よりそれほど大きいというわけではありません。腕っ節の強い人夫達よりはどうしても見劣りします。だから自分に自信が持てなかったんですよ。誰かが『暮らしが大変だ』というたびに仕事を譲ってしまっていたのも、その自信のなさだったのかも知れないと、最近思うようになりました。あの日も・・・そうやって人夫募集の広場からふらふらと市場に来て、途中で王国剣士さんにぶつかりそうになりましてね・・・。あの時思いとどまっていればとも思いましたが・・・。結局はあんなことになってしまいましたけど、今はこうしてここで仕事をしていられる・・・。人生なんて、わからないものですね。何が転機になるか・・・。」
 
「・・・・・・・・・・。」
 
 グラディスもガウディも黙って聞いていた。が・・・ふと、今のエイベックの話の中に、引っかかるものがあってグラディスは顔をあげた。
 
「王国剣士?」
 
「はい。」
 
「・・・それは、こいつに会う前かい?」
 
 グラディスは、半分自分の後ろに隠れるようにしているガウディを目で指し示した。『会う前』とはつまり、『捕まる前』のことだ。自分達の話に聞き耳を立てている誰かがいないとしても、ここはエイベックの職場だ。人夫頭としてのエイベックの立場というものもある。迂闊な言葉を使うわけにはいかないことくらい、若いグラディスにもわかっていた。そしてグラディスよりも10歳は年上と思われるエイベックも、それは気づいた。彼は彼で、グラディスの気遣いに感謝していた。
 
「ええ、そうですね・・・。見回りの方だったのかと思いますが・・・。」
 
「その王国剣士とは、何か話したかい?」
 
「ええ、ぶつかりそうになったので謝罪しました。ただ、なんという方かまでは・・・。」
 
「ということは、見たことがある顔じゃなかったと言うことか。」
 
「顔はたぶん・・・見たことがあると思いますが、あの辺りにはいつも王国剣士さんはたくさんいらっしゃいますから・・・。」
 
「そうか・・・。そのぶつかったのはどのあたりだったか覚えてるかい?」
 
「そうですねぇ・・・。」
 
 エイベックは少し考えていたが・・・
 
「あ、そうそう、13番通りの前でしたよ。背中にぶつかりそうになって慌てて避けたんですが、私の肩が少し接触してしまいましてね。ですからもしかしたら、13番通りに向かっておられたのかも知れませんね。」
 
 ガウディはエイベックの話を聞きながら、あの日のことを思い出していた。あの時間帯なら、自分の他にもあの広場を見回っている王国剣士はいたはずだ。だが、『泥棒!』と叫んだ声に反応したのは、おそらく自分だけだと思う。声を聞いてから現場に着くまで、それほど時間はかかっていない。でも他には誰も来なかった。おそらくすぐ近くにはいなかったのだろう。でなければもっと王国剣士が駆けつけても良かったはずだ。ということは、その剣士もあの時、もうそこにいなかったと言うことになる。
 
(つまり、この人の記憶が確かならば、その王国剣士は13番通りの中にいたということか・・・。でもそれもおかしいよな。グラディスがローディさんと会ってから、他の剣士には誰1人出会っていないはずだし・・・。ということは・・・通りを見回って他の通りに抜けて行ってしまったのか・・・。)
 
 その剣士が特定出来れば、もしかしたら13番通りの奥で行われていた怪しい取引の、手がかりが見つかるかも知れない。それに、『E』という人物が通りの奥に行くところも・・・
 
 そこまで考えて、ガウディは我に返った。そんな都合のいい話があるはずがない。偶然の出会いなんてそんなものだ。その王国剣士は、単にそこを通っただけだろう。自分が通り過ぎたあとに13番通りで起きたことなんて、何も知らないに違いない。
 
「13番通りか。あのあたりも入り組んでいるからなあ。」
 
 グラディスはさりげなく話をしているが、おそらく彼の心臓はものすごい速さで打っていることだろう。
 
「そうですね。私は城下町の生まれなのでこの町を遊び場にして育ちましたが、あのあたりはかくれんぼと鬼ごっこには最適なんですよ。」
 
「ははは、そうだな。俺もこの町の生まれだから同じだよ。」
 
「そうでしたか。私はこの町が好きですからね。少しでも住みやすくなるように、頑張ります。せっかくダゴスさんが私を見込んで雇ってくださったわけですしね。」
 
「・・・ダゴス?その人は確か、今周旋屋の組合の組合長代行をやってるって言う人かい?」
 
「ええ、剣士さんはご存じなかったんですか。私を人夫募集の広場に連れて行ってくださった時、剣士さんが話をしていたのがそのダゴスさんですよ。」
 
「あのおっさんがそうなのか・・・。」
 
 自分を見て一番顔をひきつらせたあの周旋屋がダゴスか・・・。
 
「夕方周旋屋が人夫の勤怠をとりに来るそうだが、誰か来るかはわかるかい?」
 
 エイベックは少し考えていたが・・・。
 
「わかりませんねぇ・・・。当番が決まってるわけではないんですよ。その日その日で手が空いている人が来るみたいですからねぇ。」
 
「そうか・・・。ありがとう。仕事がんばってくれよ。息子さんによろしくな。」
 
「はい、ありがとうございます。」
 
 エイベックは笑顔で礼をして、事務所に入って行った。
 
「・・・また王国剣士か・・・。」
 
「あのローディさんという人も会ったと言っていたな。」
 
 グラディスの後ろで縮こまるようにしていたガウディが、やっと口を開いた。そんなに卑屈にならなくてもといいのにとも思うが、ガウディはおそらく、エイベックよりもあの隣人レイラの言葉のほうが心の奥に突き刺さっているのではないかと思い直し、グラディスは黙っていた。
 
「ああ・・・いったい誰なんだろうな・・・。まああの辺りは常に何組も廻っているから、すぐにわかりそうな気もするが・・・。」
 
「でも俺が駆けつけた時には誰も来なかったぞ。」
 
「そうか・・・。となると、たまたまあの市場のあたりに巡回の組がいなかったということになる・・・いや、今の人もあのローディさんも2人とは言ってなかったよな。」
 
「二手に分かれていたってことかもしれないが・・・そもそも、本当に王国剣士なのか?」
 
「誰かが化けてたってことか?」
 
「可能性としてゼロではないだろう。俺達は普段制服の上に鎧を着ている。似たような色の服を着て鎧で覆っておけば、ぱっと見ただけでは本物の制服を着てるのかどうかなんてわからないんじゃないか。」
 
「・・・うーん・・・確かに、泥棒と声が上がった時、近くに王国剣士がいたら必ず駆けつけるはずだしなあ・・・。」
 
 実際王国剣士の偽物騒ぎは以前からたびたび報告されている。もっともぱっと見ただけでは騙せても、その言動や身のこなしでほとんどが犯罪を犯す前にばれるわけだが・・・。
 
「もちろん偽物とは限らないから、どっちの可能性も考えておいたほうがいいかもな。それに、あのローディさんが会った剣士とあの人が会った剣士が同じとは限らんしな。」
 
「それもそうか・・・。あとで団長にも聞いて・・・いや・・・。」
 
 グラディスの声が途切れた。さっきの団長室での話で、団長と副団長に対する二人の疑念はまた大きくなっていた。
 
「・・・あとでパーシバルさんに相談してみよう。それより、もう一度現場を見ておかないか。」
 
「そうだな・・・。」
 
 2人はモーガン医師が発見された現場に戻ってきた。死体がはまっていた廃材のくぼみや、上に乗っていたという廃材の際についた血など、もう一度入念に調べた。
 
「そろそろかな・・・。」
 
 しばらくして、2人はもう一度事務所に行ってみた。思った通り、そこにはさっきはいなかった男がいる。その顔は、確かにあの日エイベックを連れて行った広場で出会った男だった。
 
(こりゃついてるな!)
 
 グラディスは心の中で思った。誰が来るかわからないはずなのにダゴス本人が来るなんて、これは幸先がいいかもしれない。
 
「こんちは。お疲れ様です。」
 
「はい、お疲れ様・・・!?」
 
 笑顔で振り向いた男は、グラディスの顔を見た途端顔をこわばらせた。
 
「そんなにびっくりしないでくれよ。この間は助かったよ。あんたが組合の代表代行だって聞いたから、もしもあんたが来るならお礼を言おうと思ってたんだ。会えてよかったよ。」
 
 とっさに口から出た出任せだが、エイベックを雇ってくれたことについては本当に感謝している。あの親子はこれからきっと毎日を楽しく生きていけることだろう。
 
「・・・あ、ああ・・・いえいえ、とんでもないですよ。かえっていい人材を連れてきてくれて、あそこまで親身になってくれるなんて、若いのにいいだんなだと思ってましたからね。」
 
 ダゴスの顔はもう元の笑顔に戻っている。
 
「おやダゴス、君はこの剣士の知り合いだったのかい?」
 
「ええ、少し前にエイベックさんを連れてきてくれたのがこの剣士さんなんですよ。」
 
「そうだったのか。それは私からも礼を言わなければならないね。本当にいい人材を紹介してくれたよ。」
 
「い、いや・・・まあその、半分は成り行きですから・・・。」
 
 元をたどればエイベックの盗みをガウディが捕まえたことだ。だがさすがにここでそんなことは言えないし、ガウディだって居心地が悪いだろう。グラディスは曖昧に笑って言葉を濁した。
 
「それじゃ剣士さん方、早いところ犯人を捕まえてくださいよ。工事現場に死体なんて・・・。」
 
 ダゴスはそこまで言ってぶるっと震えた。
 
「・・・・・・・・・・?」
 
 さっきホルムが言っていたように、一般人は死体になんてほとんどお目にかかる機会がないはずだ。だからダゴスが震え上がるのは理解できるのだが・・・
 
(まるで何かを思い出したみたいな震え方だな・・・。)
 
 死体が発見されたことを知っているなら、最初から震えていてもおかしくないはずだが・・・。
 
(まあそれは俺の主観だからなあ・・・。)
 
「誰が亡くなったかは聞いたのかい?」
 
 グラディスは話の接ぎ穂のつもりで何気なく聞いたのだが、ダゴスは一瞬顔をこわばらせ、怯えた顔を見せた。
 
「え・・・ええ・・・モーガン・・・先生でしたよね。かなり有名な方だそうですが・・・。」
 
「医師会じゃかなり実力がある主任医師の一人だって話だよ。モーガン先生のことは知ってたのかい?」
 
「は・・・はい・・・。有名な方ですからね・・・。あ、あの、それじゃそろそろ失礼しますよ。これから王宮に行って、人夫達の給金を受け取ってくるので、支払いが遅れたら大変ですからね。」
 
 ダゴスは唐突に話を切り上げ、書類をかき集めて担いでいたカバンに入れ始めた。
 
「あ、ああ。いきなり死体の話なんて初めて悪かったよ。気を悪くしたなら謝るよ。」
 
 慌てたように帰ろうとしていたダゴスは、ぴたりと動きを止めて、ばつが悪そうに頭をかいた。
 
「い・・・いや、その・・・まあ我々一般人は死体なんてめったにどころかほとんど見る機会もないものですからね・・・。そこにあったと聞いただけでもう怖くて・・・。」
 
「そうだよな。悪かったよ。ちょっとだけ話を聞かせてほしいんだ。それで待ってたんだよ。あんたが来るとは思ってなかったんだが、今は組合長の代行をやってるそうだな。」
 
「ええ・・・組合長なんて務まる器じゃないんですが、誰もまとめ役がいないと組合自体がなくなっちまいますからね。せっかくガルガスさんがいろいろ取り決めを作ってくれて、仲良くやっていたわけですし、すこしでもそのお手伝いが出来ればと思いまして、代行ということでならと引き受けたんですが・・・。」
 
「そうか・・・。今人夫の集まる状況はどうなんだい?」
 
「この間だんながおいでになった時と大して変わりませんよ。ただ、仕事はあるんです。だから、毎日来てくれればと思いますよ。そうすればいずれ雇うことも出来ますからね。ところがみなさん、三日も過ぎると来なくなっちまう。さっきも事務所に王国剣士のだんながいらっしゃいましてね、人夫達の間で揉め事なんかは起きてないかと聞かれましたけど、毎日広場に来てくれればたぶん揉め事なんて減るんですよ。ですからだんな、人夫希望者に会うことがあったら、またこの間みたいに連れてきてくださいよ。」
 
「わかったよ。ところで事務所に行った王国剣士ってのは誰だかわかるか?」
 
「パーシバルさんとおっしゃる方でしたよ。確かあの方は時期剣士団長と言われている方ですかね。すらりと背が高く男前ですな。」
 
 いつの間にかダゴスの表情はさっきと同じ笑顔に戻っていた。
 
「そうか。引き留めて悪かったな。」
 
「いえいえ、そんなことはないですよ。」
 
 ダゴスはさっきまとめてカバンに突っ込もうとしていた書類を一度引っ張り出し、重ね直し始めた。
 
「それが人夫の勤怠かい。」
 
「ええ、ホルムさんの書類はいつも見やすくて助かってるんですよ。」
 
「ははは、そんなことはないよ。どの監督官も同じだと思うがね。」
 
 ホルムが笑った。ダゴスの手元を覗き込むと、確かに字はきれいだし、数字も見やすい。
 
「しかしそれほど大量の書類を作るのも大変そうですね。」
 
 グラディスが言った。王国剣士は書類仕事なんてほとんど縁がない。書類に囲まれて仕事をしているのは、当番の採用担当剣士と剣士団長、副団長くらいだろう。どれをとっても自分には縁のない役職だ。せいぜい、勤続年数が長くなれば採用担当は廻ってくることがあるかもしれない、というところだろう。
 
「これだけの人が働いているからね。それも仕事さ。」
 
 ホルムの机の上にはまだ書類が積まれている。
 
「一人一人に給金を渡すには正確な勤怠が必要になりますから、見やすいのはありがたいですよ。」
 
 ダゴスがやっと書類を整理してカバンに入れ、背負った。
 
「これから王宮かい?」
 
 グラディスが尋ねた。
 
「ええ、全員分の金を受け取らないとね。」
 
「しかし一人で運ぶのは危険じゃないのか?」
 
「王宮には仲間が行ってるんですよ。それに、王国剣士さんが護衛してくれます。」
 
「ああ、そういえばそうか。それなら安心だな。金を払うのは行政局だから、護衛するのは確か執政官勤務の剣士だ。俺達はもうそろそろ入団して3年だから、いずれそういう仕事をすることにもなると思う。」
 
「おやそうでしたか。その時はよろしくお願いしますよ。」
 
「しかしそれにしても大変だな。大量の勤怠書類を持ち込んで金を預かって、入る金より手間のほうが大変なんじゃないか?」
 
 これもまたグラディスは話の流れで何気なく言ったのだが、またしてもダゴスが顔をこわばらせた。そういえばその手数料の高騰が今問題になっているのだったと、グラディスは思い出した。まずいことを言ったかもしれない・・・。
 
「あ、いや、そんなのは余計なお世話だな。どうも俺は考えなしに余計なことを言っちまうんだ。気を悪くしたなら許してくれ。この通りだ。」
 
 グラディスが頭を下げた。
 
「・・・いやいや、お気になさらず。では失礼します。」
 
 ダゴスが事務所を出て行った。
 
「・・・ホルムさん、すみません、余計なことを言って・・・。」
 
「いや、いいよ。それに、彼らが手数料を引き上げているのは事実だからね。おそらく痛いところを突かれたんだろう。ダゴスは実直な男だが、彼が代行になってからも手数料がじわじわ上がっているし、しかも組合の中の何人かがその手数料を下げ始めたりして、足並みが乱れているのは確かなんだ。このまま組合が崩壊、なんてことになると困るんだが、私も立場上あまり口出しできなくてね・・・。」
 
 ホルムがため息をついた。
 
「行政局の調査待ちなんですね。」
 
「そうなんだ。事件性があるとでもなれば王国剣士に依頼することも出来るんだが、今のところはねぇ・・・。」
 
 その後もう少しホルムに話を聞いてみたが、ほかの現場でも似たような状態らしく、どこの監督官も頭を悩ませているらしいことがわかった。そんなわけで今回の死体騒ぎについても、とにかくできる限り早く解決してほしい、これ以上人夫達の間に動揺が広がらないようにしたいからねと頼まれ、2人は事務所を出た。
 
「なんだお前らも今か。」
 
 声に振り向くと、パーシバルとヒューイがいた。
 
「人夫の聞き取りは終わったんですか?」
 
「ああ、やっと今な。さっき行った時は落ち着いていたんだが、話しているうちに震えだして、なだめるのに一苦労だったよ。世話をしていた看護婦も相当怯えていてなあ・・・。しかもモーガン先生だと聞いて相当衝撃を受けているらしい。まあ気持ちはわかるがな・・・。」
 
 パーシバルがため息をついた。やはり一般人が死体を見たりしたらそのくらい怯えるのが普通だ。
 
「さて、暗くならないうちに現場に戻ろう。現場検証の結果を教えてやるよ。」
 
 グラディス達は、パーシバルとヒューイについてまた死体発見現場に戻ってきた。
 
「よし、それじゃ最初から説明するよ。まず死体発見時の状況からだが・・・。」
 
 パーシバルが死体発見時の状況から、現場検証までの経緯を話し始めた。グラディスとガウディは何一つ聞き漏らすまいと、メモを取り始めた。
 
「・・・かすり傷1つ・・・ですか・・・。」
 
 モーガン医師の死体に、生前ついたと思われる傷が致命傷となった傷以外何もないと聞いて、グラディスもガウディも青ざめた。
 
「ああ・・・平気で人を殺すような奴らがそれほどの腕を持っているとは考えたくはないが、それが事実だ・・・。」
 
 パーシバルが悔しそうに言った。
 
(手練れ・・・か・・・。)
 
 剣士団長ならば、間違いなく『手練れ』だ・・・。
 
(また俺は・・・そんな事を・・・・。)
 
 考えてはいけないと思うのに疑念がぬぐい去れない。
 
「パーシバルさん、さっきここを見ていて思ったんですが・・・。」
 
 どうしても強くなる団長と副団長への疑念を振り払うように、グラディスはパーシバルに質問を始めた。
 

外伝9へ続く

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