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「あのお、ちょっとお聞きしてもいいですか?」
 
 突然ティナが遠慮がちに口を挟んだ。
 
「いいよ、なんだい?」
 
「カインて・・・おうちに帰るときに女の子連れてましたよね?」
 
「ああ、連れて来たよ。」
 
「やっぱり!それじゃもう結婚するとか?」
 
「カインは君達にもそんな話をしていたのかい?」
 
「はっきり言ってたわけじゃないんですけど・・・。おつきあいOKの返事をもらえたって、すごく喜んでたから・・・それに、結婚する気でもなけりゃ、男の人と一緒に旅行なんて出来ませんわ。しかも相手のご両親に会いに行くなんて。」
 
「まあ、傍から見ればそう見えるんだろうね。でも実際は、まだまだそんなところまで話は進んでいないよ。入団したての半人前以下の王国剣士に結婚なんて早すぎるからね。それに、まだ若いんだから先のことなんて誰にもわからないさ。」
 
「そ、それじゃその・・・えーと・・二人はもう・・・。」
 
 ティナの声は途中で小さくなり、口の中で何かもごもご言っているがよく聞き取れない。
 
「おいはっきりしゃべれよ。困ってるじゃないか。」
 
「だ、だって・・・。」
 
 真っ赤になったティナの様子で何となく察しがついた。
 
「言っておくけど、よその娘さんを預かったんだから、そのあたりはちゃんとけじめをつけさせていたよ。」
 
「あ、そ、そうなんですか・・・?」
 
 ティナはほっとしたように顔を上げたが、まだ顔が赤い。この手の話を曖昧にすると、カインよりもフローラが傷つくことになる。はっきりさせておいたほうがいい。
 
「けじめって・・・。」
 
 ジョエルは最初きょとんとしていたが、ティナの、そして私の言わんとするところを察したのか、ティナと同じように赤くなった。
 
「何を聞くのかと思ったら・・・お前何考えてんだよ!?」
 
 ジョエルは赤くなった顔をごしごしと擦りながら、ばつ悪そうにため息をついた。
 
「だ、だって・・・重要なことじゃない!男にはわかんないのよ!あんたは黙ってて!あ、あの、すみません。・・・でもおつきあいは認められたんですよね?」
 
「まあそうだね。いい娘さんだったし、カインの母親とも気が合ったみたいだから。」
 
「お母様と・・・そうですか・・・。・・・う〜ん・・・ご両親に会って交際を認められたとなると、ちょっと手強いわね・・・。」
 
 なぜかティナは考え込んでしまった。
 
「おいティナ、何でお前がそんなに考え込むんだよ。お前まさかカインのこと好きだったとか・・・。」
 
「バカ言わないでよ!あたしはもっと落ち着いた人がいいわよ!あ・・・」
 
 ティナはあわてて口を押さえた。我が息子の落ち着きのなさは、誰もが認めるところらしい。
 
「いいよ。あの調子では、誰にそう思われても仕方ないからね。」
 
「す、すみません・・・。」
 
 ティナはまた真っ赤になってしまった。
 
「それなら何でお前が気にするんだよ。そりゃ僕だって彼女のと仲がうまくいくといいなと思うけどさ。」
 
「だってチェリルが気にしてたのよ。カインが雑貨屋のフローラを連れて帰省するって聞いたときは、この世の終わりのような騒ぎだったんだもの。」
 
「ああ・・・あいつかぁ・・・。でも仕方ないじゃないか。」
 
 チェリルという娘がカインを好きだという話は、それなりに有名らしい。
 
「仕方ないなんてまだわからないじゃないの。でも確かに苦しいわよねえ。ご両親に交際を認められて、お母様とも仲良くなっちゃったんじゃ・・・。」
 
「そういやチェリルは、自慢の料理でカインを振り向かせてやるって言ってたっけなぁ。どうなったんだろう。」
 
 独身で一人暮らしが長い男ならうまい食事でも釣れるかもしれないが、カインは妻の食事になれている。妻の味を超えるのはなかなか難しいだろうと思う。
 
「そうねぇ・・・。でもそれが食堂で出される食事では、おいしくて当たり前だと思われるのが落ちよね・・・。よし!王宮に戻ったらチェリルと相談しなくちゃ。アプローチの仕方も変えなきゃね。」
 
「な、なんだかやたら張り切ってるな、お前・・・。まあがんばってくれよ。」
 
 ジョエルは肩をすくめてみせた。もうこの話には関わらないと言いたげだ。チェリルというのはどうやら剣士団宿舎の食堂に勤めているらしい。
 
「与太話は終わりか?」
 
 エルガートが先ほどからティナとジョエルをにらんでいたのだが、二人とも彼の視線には全く気づかず夢中で話していたのだ。
 
「あ、す、すみません・・・。」
 
「ま、お前達は若いから、そういう話に夢中になるのも仕方ないが、おいティナ、恋の橋渡しもいいが、仕事に支障が出ないようにしろよ。」
 
「は、はい・・・。すみません・・・。」
 
「さてと、これ以上ぼろが出ないうちに、そろそろ事情聴取を始めましょうか。おい二人とも、詰所にいる間は、くだらない話ばかりしてないでくれよ。」
 
「わ、わかりました・・・。」
 
 リックの叱責に二人ともしょんぼりと頭を下げた。
 
(ばか、お前がおかしなこと言うから・・・)
 
(おかしなこととは何よ!?女にとっては大事なことなのよ!)
 
(ちぇっ!女は気楽でいいよなぁ。)
 
(あら失礼ね!あなたみたいなもてない男に言われたくないわ!)
 
(そんなの関係ないじゃないか!)
 
(関係あるわよ!だいたいねぇ・・・)
 
 背後で二人がもめている声が聞こえる。リックとエルガートはあきれたようにそろってため息をつき、ドーソンさんはこらえきれないように口を押さえて笑っている。カインを好きだなどという物好きな娘がフローラ以外にもいるらしいという事実に、私は少なからず驚いていた。
 
(でもそう言ってしまうと、イルサも物好きって事になるしなぁ・・・。)
 
 王立図書館の司書として忙しい日々を送っているらしいと言う話は、以前イノージェンから聞いたが、今頃どうしているのだろう。ライザーさん達は、祭り見物に行くことをイルサやライラに連絡しているのだろうか。
 
「・・・どうぞ。」
 
 新しく増設された一番奥の部屋に入り、扉を閉めたとたん、リック達がまたため息をついた。
 
「先生、あいつらが無礼なことばかり申し上げてすみませんでした。」
 
「いや、気にしてないよ。おかげで息子が日常どんな状態なのか知ることが出来て、かえって感謝したいくらいだよ。」
 
「そう言っていただけるとありがたいですが・・・でも王国剣士たるもの、口の軽さはほめられたものではありませんよ。言っていいことと悪いことの区別くらい瞬時に判断できなくては・・・。」
 
「二人ともまだ若いようだから、これからじゃないのかな。うちの息子だってそれほど口が堅いとも思えないしね。」
 
「カインは口が堅いですよ。」
 
 リックの意外な言葉に私は思わず顔を上げた。
 
「それは意外だな。あのお調子者が口が堅いなんて・・・。」
 
「いや、確かにカインは口が堅いですよ。言うなと言われたことは絶対に言わないんですが・・・。」
 
 この微妙な語尾の伸び具合が、なんとなく私を不安にさせる。
 
「言わないけど、何かあるんだね。」
 
「はあ・・・その・・・カインの場合は顔にでるんですよ。顔と態度ですね。そういうときのカインは表情もぎこちないし、右手と右足が一緒に出たりと、ひと目で『何か隠してる』とわかってしまうので・・・。」
 
「そういや、鼻でスープを飲もうとしてたのは一ヶ月くらい前だったかな。」
 
 エルガートが口を挟んだ。
 
「ああ、あれなぁ・・・。あの時は相当ぼんやりしてたっけ。」
 
「鼻で・・・スープ!?」
 
「そうなんですよ。一ヶ月・・・もう少し前かな。カインとアスランが食堂にいたときに会ったんですけどね。アスランは食べることに集中してたんですが、カインはスープをすくったスプーンを顔に近づけたままぼんやりしてたんですよ。アスランに突っつかれてあわててスープを飲もうとしたらしいんですが、スプーンがちょうど鼻の頭に当たって顔のど真ん中にスープをかけちゃったんですよ。本人はびっくりして鼻からスープをすすっちゃったみたいだし、それでくしゃみはするわ咳はするわ、挙句にスープ皿をひっくり返して服までびしょびしょにして、食堂は大騒ぎでしたよ。」
 
「・・・貴重な情報を教えてもらったみたいだね・・・。そんなことは一言も言わなかったな・・・。」
 
「なんだか泣きそうな顔をしていたんで、あんまり責めなかったんですけどね。いつも人一倍うるさいくらい明るい奴なのに、何かよほど人に言えないことがあったのかな、なんて話してたんですよ。聞いても疲れてるだけだってしか言わなかったから、しばらく気をつけて見てるよう、アスランの奴には頼んでおきましたけどね。」
 
 一ヶ月前と言えば、休暇の前の話だ。カインがそれほど衝撃を受けたことがあるとすれば、アスランの一件だろうか。そう考えれば、その大騒ぎの顛末を家で話さなかった訳もわかる。その話をすれば、その原因となったアスランの母親のことを話さなければならなくなる。さらにそんな話をどうやって聞いたのかなど、カインにとっては都合の悪いことばかりだ。
 
(さすがにそこまでの大失敗は親にも言いたくなかっただろうしな・・・。)
 
 この話は聞かなかったことにしておいてやろう。
 
「そうか・・・。でも家に帰ってきたときはやたら賑やかだったから、たぶん本当に疲れていただけなのかもしれないよ。」
 
「そうなんですか?ならいいんですが、カインもアスランも、間違いなく若手のトップに立てるだけの力はありますからね。よけいなことに気をとられず、地道に訓練を積んでほしいものです。」
 
「さっきの二人は、今のところ新人の中ではトップというところなのかな。」
 
「そうですねえ。実力だけなら、そんなに突出しているわけではないですよ。でもあの二人は、今年の新人達の中では一番冷静なほうなんです。あれで口の軽さが何とかなればいうことないんですけどね・・・。」
 
「ははは。ということは、ほかの新人達はなかなか血気盛んなんだね。」
 
「そうなんですよ。とにかくやたらと実績を作りたがる連中ばかりなんです。だからみんな城下町の外には出せないんですよ。団長の話だと、昔入団一ヶ月で南地方に行こうとしたり、実際に行ってしまって大変な目にあったりした剣士がいるそうなんです。それで以後はそんなことのないように、15年ほど前から自由警備が見直されて、入ったばかりの新人にはまず無難な警備場所を割り振って、そこを辛抱強く警備できるかどうか、ある程度の忍耐力を試すことにしたそうなんです。おかげで新人達からは不満たらたらですけどね。さっきのティナとジョエルがローラン方面にのみ警備範囲を広げてよしと団長からいわれたときは、ほかの剣士達が団長室に押しかけてましたよ。『実力なら負けてないのに』ってね。」
 
「ふぅん・・・だいぶ手強い新人達らしいね。うちの息子も団長室に押しかけた口なのかな。」
 
「どうだったかな・・・。なあエルガート、あのときカインはいたっけ?」
 
「ん?えーと・・・・あ、いや、いなかったと思うぞ。・・・うんうん、いなかった。ほら、俺達あの時、出かける前に急いでメシを食おうって、団長室の前の騒ぎには顔を出さなかったじゃないか。食堂の前でカインとアスランに会って騒ぎの原因を聞いたんだよ。それでおまえらは行かないのかって聞いたら、『あの団長が俺達に押しかけられたくらいで考えを変えるとは思えない』って、アスランのやつが言ってたと思ったなあ。」
 
「ああ、そうかそうか。アスランのやつは冷静だよな。カインは行きたがってたらしいけど、アスランが動かなかったからあきらめたみたいだったな。」
 
「まあアスランは正しいよ。団長がそう簡単に自分の考えを曲げたりするものか。」
 
「オシニスさんは相変わらずなんだね。」
 
「そうらしいですね。我々は自分が入団してからのことしか知りませんが、とにかく頑固一徹ですよ。でもとてもいい方ですけどね。」
 
 リックとエルガートの顔に笑みがこぼれる。オシニスさんはみんなに慕われているようだ。
 
「あの人はいい人だよ。でも怒ると怖い。私も何度げんこつを食らったか。」
 
 この言葉にずっと黙って話を聞いていたドーソンさんが吹き出した。
 
「でも今の連中は幸運だよな。オシニスのげんこつはともかく、セルーネからげんこつを食らわずにすむわけだからな。」
 
「・・・あれは痛いですよ。」
 
「ぶわっはっはっは!あいつの渾身の一撃から回復するためには治療術が必要なくらいだからな。さてと、いい落ちがついたところで、リック、エルガート、そろそろ本題に入らないか。」
 
「そうですね。長話をしてしまって失礼しました。では事情聴取を始めさせていただきます。先生、まずはファロシアを訪れた経緯から話していただけますか?もしも差し支えなければ、なぜあの村に行かれたのかなどもお聞かせ願いたいのですが。もちろんこれは別に取り調べではありませんから、どうしてもということではありません。ただ、先ほどのテレンスの話だと、先生方が村に入ってこられたときから、ルノーはお二人をあまりよく思っていなかったようなので、何かそれなりの原因があるのかどうか、もちろんルノーが目を覚ませばあいつからも事情を聞きますが、まずは先生の口から事の次第を教えていただきたいと思うのですが・・・いかがでしょう。」
 
「隠すことは何もないよ。本当は私達は今日ファロシアに行く予定はなかったんだ。ローランで一通り知り合いを訪ねたら、海鳴りの祠見物でもして、明日の朝にはローランを発つ予定だったんだけど、デンゼル先生の診療所を訪ねたときにちょっとした頼まれごとをしてしまってね・・・。」
 
 私はセーラを預かってくれとデンゼル先生から頼まれた経緯と、そのために彼女の両親に挨拶しようと思い立って出かけたのだと話した。セーラと母親の確執までは黙っていたが、この二人やドーソンさんはもしかしたらその話を知っているかもしれない。聞かれたら答えればいいだろう。
 
「そうでしたか・・・。テレンスの話では、あいつは最初お二人をそんなに危険な人物とは思わなかったそうです。でもファロシアに旅行者なんてそうそう来るはずがないのも事実ですから、一応目的を聞いておこうと近づいたのだそうです。テレンスが話しているうちに、ルノーが先生の腰の剣に気づき、今時長剣を下げて歩くなんて王国剣士くらいなものだし、それをわざわざマントの下に隠しておくなんておかしいんじゃないかと言い出したそうなんですよ。」
 
 やはり『剣を隠し持っている』と思われたらしい。
 
「その後テレンス達がギード商会の使用人と広場の箱の件でもめているところに先生方が通りかかり、村の入り口から飛び込んできたギード氏の助けに応じて村を飛び出した、これで間違いないでしょうか。」
 
「間違いないよ。あの時はテレンス達にセーラの家の場所を聞いて、行ってきたところだったんだ。」
 
 結局セーラの母親は出かけていて会えなかったこと、その後海鳴りの祠に行こうと村の入口まで戻ってきたところに、広場の片隅に積み上げられた箱の山の前でもめていたテレンス達を見かけて声をかけたところから、ギード氏が助けを求めて飛び込んできたときテレンスもルノーもギード氏の言葉を疑ってなかなか動こうとしなかったことまで全部話した。下手に隠すことは彼らのためにならない。
 
「でも先生はギード氏の言葉を信用されたんですね。」
 
「あのあわてようが嘘には見えなかったし、もしも嘘ならそれはそれでいいんじゃないかと思ってね。」
 
「どういうことですか?」
 
「嘘だったってことは、つまり平和だってことさ。振り回されるのは確かに困るけど、モンスターなんていないほうがいいじゃないか。」
 
「なるほど・・・確かにそうですね・・・。」
 
「・・・広場の箱の前で話していたところ・・・・ギード氏が助けを求めて・・・村の外に・・・・飛び出した・・・と。えーと、それから・・・。」
 
 エルガートがリックの隣でメモをとっている。リックはしばらくの間それをみていたが、やがて話しかけた。
 
「エルガート、話を進めていいか?」
 
「ああ、大丈夫だ。すると次は、そのへんなけものに出くわしてからの話だな?」
 
「そうだな。では先生、その後の・・・」
 
「失礼します、入ってもよろしいでしょうか?」
 
 扉がノックされて聞こえてきたのはジョエルの声だ。
 
「なんだ?何かあったのか?」
 
 扉の近くにいたエルガートが立ち上がり、扉から顔だけ廊下に出した。私の位置からはジョエルの姿は見えないが、声は特に緊迫している様子が感じられない。
 
「あの、クロービス先生の奥様が来・・・い、いらっしゃったんですが・・・。」
 
 ジョエルは慣れない敬語を使って舌をかみそうだ。そういえばカインも敬語は苦手だったっけ。今時の若者というのはみんなそうなんだろうか。
 
(・・・何でこう変なところばかり気になるのかな・・・。)
 
 息子と同期の王国剣士と言うことで、どうも私は彼らと息子を比べようとしてしまっているようだ。彼らは彼らであり、カインはカインだ。少し頭を切り換えなければならない。
 
「そうか、それじゃこちらに通してくれ。」
 
「わかりました。」
 
 ジョエルの足音が遠ざかり、やがて別な足音が近づいてきて開いたままの扉から妻が顔を出した。
 
「こんにちは。お話は終わったの?」
 
「いや、ちょっとカインの話を聞かせてもらっていたからね。あのガーゴイルと出会ったときのことはこれからだよ。ちょうどよかったな。馬車の中のことは君に任せてたから、ノイラ夫人達の様子は君に聞かないとわからないな、なんて今思っていたところなんだよ。」
 
「あら、それじゃちょうどよかったわ。私もね、そのときの話をするのはあなたより私の方がいいかと思って来てみたのよ。」
 
「ルノーの様子はどう?」
 
「もうふつうに眠っているのと変わりないくらいよ。熱も下がったわ。さっきアーニャが来てくれたからあとを頼んできたの。」
 
「へぇ、そういえばアーニャはずっと見かけなかったけど、どうしてたんだろう。」
 
「自分の担当の患者さんを診ていたらしいわよ。6室の病室のうち、4室までは受け持っているらしいから、結構毎日忙しいみたい。」
 
「そうか。それじゃ心配いらないな。さっきの話を続けようか。」
 
 私はリックに向き直った。妻が私の隣にいすを引っ張ってきて座った。私はさっきまでの話を説明し、さらにエルガートが私の話を書き込んだメモを見せてくれたので、妻にも今までの経緯が理解できたようだ。
 
「では先生、村の外に飛び出して、馬車を見つけたところからお聞かせいただけますか。」
 
「わかった。あの時私達は村の外に飛び出して、ギード氏の言っていた場所に向かって街道を南に走ったんだ・・・。」
 
 私は、ギード氏の言ったとおりの場所に傾いた馬車があって、コボルド達が取り囲んで揺すったり叩いたりしていたところから、その中に一匹だけ真っ黒い体毛のけものがいたこと、どう見ても南大陸に生息しているガーゴイルにしか見えなかったこと、そして追いついてきたテレンス達に彼らの撃退を任せて馬車にたどり着き、けが人の手当をしようとしたところに外の叫び声を聞いたので、テレンス達の加勢に回るために私だけが外に出たことなど、とにかく自分達の行動を思い出せる限り詳細に話した。妻は私が出て行ったあとの馬車の中で、ノイラ夫人を励まし、子供達のちょっとした擦り傷などの手当をし、気を失っている子供は無理に起こさず、目が覚めたときに一番最初に母親の顔が見えるようにと、ノイラ夫人に抱いていてくれるように頼んでいたそうだ。あのメリナという女の子が笑顔を見せていたのは、目が覚めたときしっかりと母親に抱かれていたことで安心したからなのだろう。さらに御者のトラスからも、襲われたときの詳しい経緯を聞き出してくれていた。
 
「・・・そのあとはさっき何度か説明したとおりだよ。テレンスとはだいぶもめたけど、とにかくルノーの傷の手当てをして、馬車を呼んできてもらってローランまで運んだんだ。それと誤解のないように言っておくけど、私が気功を使ってルノーを麻痺させたことは確かだ。だがそれはあくまでけがの悪化を防ぐためと、けが人が戦闘のじゃまにならないようにという考えからだよ。」
 
「・・・なるほど、わかりました。」
 
 エルガートがうなずきながらメモをとっている。このあたりの証言は、おそらくテレンスの話と私の話の中に食い違いがあるかどうかを調べるつもりなのだろう。リックとエルガートは、テレンスの話が書かれているらしい書類と私達の話のメモを持って『少しお待ちください。』と言い残して部屋を出て行った。その二人をドーソンさんは黙って見ている。話に加わる気は最初からないらしい。あの二人は任せて安心と言うことなのだろう。
 
「せっかくのお休みなのに大変でしたね。」
 
「ははは、そうだな。まあ休みといっても女房と祭り見物に行くのはもう少し先だから、後はのんびり家にいられるわけだし、少しくらいの騒ぎはかまわんさ。もっとも、これでルノーに何かあったらそれどころの話じゃないが、何とか助かりそうだからな。」
 
「そうですね。」
 
 確実に危機が去ったかどうか、それは私の目でルノーを見てみないと何ともいえないが、妻の話を聞く限りでは大丈夫なようだ。私もほっとしていた。
 
「・・・リックとエルガートはもうベテランのようですね。うちの息子も世話になってるんでしょうね。」
 
「そうだな。カインとアスランにはあいつらも目をかけているんだが、普段の仕事があるから手取り足取りって訳にいかないのさ。そのうちカインのやつが変な構えに凝っちまったから、二人とも心配していたんだ。だが、さっきの話だとおまえがだいぶ直したようじゃないか。」
 
「どうもやたらと攻撃にばかりこだわっていたようなんですよ。防御できなくても攻撃力があれば勝てるとか言ってたんですが、ライザーさんに軽くあしらわれて目が覚めたようですよ。」
 
「・・・ライザーに・・・?」
 
「ええ・・・カインと私が稽古をしているところにちょうど訪ねてくれたので、相手をしてもらったんですよ。」
 
「そうか・・・。あいつも元気なんだな。」
 
「元気ですよ。」
 
「子供達も自分の道を歩み始めているようだし、たまには顔を出してくれてもいいんだがな・・・。」
 
「こっちに来ているはずですよ。」
 
「・・・・ライザーがか?」
 
「ええ、夫婦で祭り見物と、子供達の職場見学だそうです。」
 
「・・・そうか・・・。あの島から来たならこの町を通ったはずなのに顔も出してくれないとは、水くさいやつだな。まだあの時のことを気にしてるのかあいつは・・・。」
 
「・・・ドーソンさん、あの時何があったのか、教えていただくわけにはいかないんですか?」
 
 『あの時』とは20年前、剣士団が王宮を追われて海鳴りの祠に身を潜めていた頃のことだ。濡れ衣を着せられた私達はみんなに迷惑をかけないようにと一度海鳴りの祠を出たが、その後一連の出来事の手がかりを求めて再び戻ってきた。だがそのときには、もうライザーさんはそこにはいず、その理由を誰に聞いても何も教えてくれなかった。
 
「そういう質問が出ると言うことは、ライザーはおまえに何も話していないんだな?」
 
「はい。ただ・・・自分はみんなを裏切ったと、それだけしか・・・。」
 
「そんなことを考えているやつは一人もいないさ。だが、本人が話さないってことは、おまえに知られたくないか、話せない何かがあるか、それなりの理由があるはずだ。それを私がべらべらしゃべるわけにはいかんよ。」
 
「そうですか・・・。いや、そうなんですよね・・・。」
 
「あいつに会ったら言っといてくれ。誰もあいつを裏切り者だなんて考えてるやつはいないから、いつでも顔を出してくれってな。」
 
「わかりました。必ず伝えます。」
 
「まったく・・・まじめなやつってのもこまりものだな。もう少しいい加減でもいいんだがな。そういう意味では、あいつとオシニスのコンビは絶妙だったよ。あの二人の掛け合いを、もう一度聞いてみたいもんだ・・・。」
 
「そうですね・・・。きっと聞けますよ。二人ともまだ・・・生きているんですから・・・。」
 
「・・・そうだな・・・。」
 
 少しの間沈黙が流れた。
 
「なあクロービス。」
 
「はい?」
 
 ドーソンさんの声はなぜか遠慮がちに聞こえた。
 
「さっきリック達に聞かれたんだが、あいつらはお前のことを知ってるみたいだな。」
 
「あの二人がですか?どこかで会ったことがあるんでしょうか。」
 
「いや・・・。知ってると言っても顔見知りということじゃない。お前が『ファルシオン』の持ち主だと知っていると言うことさ。」
 
「・・・どうしてそれを・・・。」
 
「さっきテレンスの事情聴取をしたときに、リック達からお前達の素性を聞かれたんだ。嘘を言うわけにもいかないから、お前が昔王国剣士だったことや、ウィローがデール卿の娘だってことは話しておいたよ。あと、カインの両親だと言うこともな。二人とも私の話を聞いて『やっぱり』って顔してたから妙だなと思ったんだが、なんでもオシニスに頼まれて団長室の資料整理を手伝っていたとき、昔の事件の記録を偶然見たそうだ。それでお前の名前を聞いたときもしやと思ったが、いきなりそんなことを聞くのも気が引けたから黙っていたらしい。素性を話したあとでそこだけ黙っているのも変な話だからな。その通りだとだけは答えておいたよ。」
 
「・・・そうですか・・・。」
 
「ま、剣の道を志す者にとっては、伝説の剣などと聞けばぜひ一目見てみたいと思うものだからな。見せてくれと言われるかもしれん。だが見せるかどうかはお前に任せるよ。断ってもいっこうにかまわん。お前はもう剣士団の人間ではないんだから、あいつらに気を遣う必要はないよ。それは言っておこうと思ったのさ。」
 
「そうですか・・。わかりました。」
 
 見せること自体には特に問題はない。だが、この剣の本当の由来までは知られるわけにはいかない。ドーソンさんはそこまで知っているのだろうか・・・。オシニスさんは・・・もしかしたらレイナック殿から何か聞いているかもしれない。いや、剣士団長ならばこの剣がどう意味を持つものなのかを知っていなければならないはずだから、聞いていると思っていたほうがいい。だとするとオシニスさんが私を城下町に呼び寄せたがったのは、手紙の中にあったように、カインとフロリア様の間に昔何があったのか、それを聞くためだけではないと考えておくべきだろう。
 
(妙な話を蒸し返されないといいんだけどな・・・。)
 
 
「失礼します、お待たせしました。」
 
 リックとエルガートが戻ってきた。
 
「先生、お待たせして申し訳ありませんでした。事情聴取はこれで終わりです。ありがとうございました。ドーソンさんもお休み中のところすみませんでした。」
 
「私のことは気にするな。たまたま居合わせたのも何かの縁と言うものさ。」
 
「つまり私達の疑いは晴れたと言うことかな。」
 
「とんでもない、あの二人はともかく、私達は先生を最初から疑ったりしていませんよ。今回のことは完全にあの二人の勇み足でした。本当に申し訳ありませんでした。」
 
「いや、そんなに謝ることはないよ。確かに行き過ぎたところはあったかも知れないけど、彼らは彼らなりに町の人達を守ろうとしていたんだろうからね。」
 
「そう言っていただけるとありがたいですが・・・。実を言いますと、ルノーは以前からあの調子で、我々もいささか手を焼いているのですよ。正義感が強いことは悪くはないのですが・・・。」
 
「そう言えば、ファロシアに来る旅行者なんてろくなやつがいないと言ってたっけな・・。あんな言い方をしたくなるような目に、彼は遭ってきたと言うことなんじゃないのかい?」
 
「そんなことまで言ってましたか・・・。テレンスは城下町の出身ですが、ルノーは小さな頃、出来はじめた当時のファロシアに一家で移り住んでいるんですよ。今のような町として体裁が整ったのはかなり最近のことで、それまでは何件か集まって人が住んでいる小さな集落程度でした。そしてそう言う集落は、よく盗賊達の被害に遭っていたんです。まず旅行者を装って町に入り込み、めぼしい家をリストアップして夜中に大勢でやってくると言う手口で、ファロシアも被害を受けていた集落の一つなんです。」
 
「そうだったのか・・・。」
 
 それならば彼が最初から私達をよく思っていなかったわけもわかる。
 
「そんなことが続いたので、町にやってくる旅行者には異常なまでの警戒心を持つようになってしまったようです。入団試験の時も、この世から盗賊を根絶したいとランドさんの前で演説をぶったそうですからね。」
 
「そうだったな・・・。活きのいいのが入ってきたって言ってたんですが・・・。」
 
 エルガートが口を挟んだ。
 
「ははは。活きがいいのはいいことじゃないか。がんばって精進しているんだろう?」
 
「ですがいささか活きがよすぎまして・・・。とにかく早く強くなりたいの一点張りなんですよ。力こそがすべてだと思いこんでいるフシがあるんです。誰彼かまわず立合を申し込んだりするのはまあ仕方ないとしても、その割にカッとなるといきなり状況判断が鈍るので、結局は負かされてまた頭に血が上っての繰り返しなんです。もう少し冷静に己を見つめる機会があればと思うんですが・・・。」
 
「なるほど、それなら今回の入院はいい機会になるかも知れないな。もっとも、彼をしばらくの間、病院のベッドの上でおとなしくさせておければの話だけどね。」
 
「それは難しそうですね・・・。」
 
 リック達は少し大げさに肩をすくめてみせた。
 
「無理矢理ということならそうだろうな。誰かがちゃんと言い聞かせられるといいんだけど、彼の方に聞く姿勢が出来ていないと、あんまり効果はないだろうね。多少荒っぽいやり方なら、しばらく放り出してやりたいようにやらせてみるのもいいかもしれないよ。」
 
「うーん・・・それは賭けですね。」
 
「たしかに。でも勝算がないわけじゃないと思うな。」
 
 結局のところ、ルノーは正義感が強すぎて自分で視野を狭くしていると言うことだ。何かちょっとしたきっかけさえあれば、もう少し物事を大局的に捉えられるようになるだろう。そうすれば自分の進むべき道も見つかるはずなのだが・・・。ハディの話を出そうかと思ったがやめておいた。ハディが自分の道を見つけるきっかけとなったのは、やはりリーザとのことだと思う。でもあの二人は未だに結婚していないのだから、若い剣士達によけいな話を聞かせることになりかねない。
 
「ありがとうございます。そう言っていただけると励みになります。今日は本当にありがとうございました。」
 
 
 私は妻とドーソンさんと一緒に詰所をあとにした。リックとエルガートは今夜診療所に泊まり込むつもりで、ティナとジョエルにいろいろと指示することがあるそうだ。外はもうすっかり暗くなっていたが、通りには明かりが灯され賑やかだ。昔は、夜詰所を出て空を見上げると美しい星が眺められたものだが、今はあまりよく見えない。宿屋の部屋からならもう少しよく見えるんだろうか。
 
「診療所のほうはどうなんだろう?顔を出したほうがいいのかな。」
 
「何かあれば宿屋に呼びに行くから大丈夫だって言われたけど、気になるなら行ってみる?」
 
「・・・いや、やめておくよ。デンゼル先生もアーニャもいるんだ。たまたま外からやってきた私がしゃしゃり出る幕はきっとないさ。それより、早く宿に帰ってゆっくりしようか。」
 
「ふふふ・・・それもそうね。」
 
「今日は大変だったな。明日は予定通り海鳴りの祠に行くのか?」
 
 ドーソンさんも微笑んでいる。ルノーの容態が安定したことで、やっと安心できたのだろう。
 
「明日こそは行きたいですね。」
 
「そうね。城下町に行ってしまったら、なかなかここまで戻って来られないだろうし。」
 
「ふむ、それもそうか。ゆっくりして来いよ。それじゃ俺はこっちだから、今日は本当に助かったよ。ありがとう。また近くを通るようなら寄ってくれよ。」
 
「はい。また。」
 
「ああ、またな。」
 
 ドーソンさんは通りのはずれへと歩いていった。『潮騒亭』の扉を開けると、中はすっかり賑やかになっていた。この喧噪の中で食事をするのも悪くはないが、今日はさすがに疲れたので、部屋に食事を持ってきてもらうようケイティに頼み、私達は早々と部屋に戻ってきた。
 
「はぁ〜・・・大変な一日だったわね・・・。」
 
 妻はベッドに腰掛けて大きなため息をついた。私も自分のベッドに寝転がったが、妙な感覚に思わず体を起こした。ファロシアに向かうために身につけていた鎧をずっと着たままだったことに気づいたのだ。
 
「すっかり忘れてたなぁ。鎧を着たままでルノーの手当をしてたのか。」
 
「あら、いやだ、私も全然気づかなかったわ。まあ・・・それどころじゃなかったから、多分誰も気にしていなかったんじゃない?」
 
「それもそうだね・・・。」
 
 鎧を外してあらためてベッドに寝転がった。どっと疲れが押し寄せたが、ルノーの命が助かったことを思えば、この疲れもまた心地よくさえ思える。
 
「はぁ・・・ルノーが助かってよかったよ。襲われていた馬車の人達もね。」
 
「そうね。それが何よりだわ。昼間は私も腹が立ってルノーを手荒に扱っちゃったけど、ちょっと悪いことしたかしら。」
 
「いや、あれはあれでいいよ。あの二人はあの時、自分達の力を過信していたからね。目の前のけもの達を侮り、怪我を軽く見ていた。どんな状況でも全力で対処しないと、思わぬ大けがをするものさ。これを教訓にしてほしいくらいだよ。」
 
「ふふふ・・・してくれるといいわね。あのルノーって子は昔のハディにそっくりみたいね。私は海鳴りの祠で会う前のハディは知らないけど、昔のあなたとカインの話を総合すると、よく似ているなあって思ってたわ。」
 
「そっくりだよ。ただ、ハディは自分の住んでいた村がなくなっちゃったけど、ルノーはそこまでひどい事態になっていなかったからね。まだマシな方かも知れない。」
 
「ハディの村は再建されたのかしらねぇ。」
 
「そこまでは聞かなかったな・・・。城下町に行ったら誰かに聞いてみようか。」
 
「そうね。いろいろ聞きたいことが出てくるわね。」
 
「そうだね。まずはオシニスさんを質問攻めにしてみようか。どうせ向こうも私達を質問攻めにしたくてうずうずしているんだろうし。」
 
「そうねぇ。あなたの質問攻めとオシニスさんの質問攻めと、どっちが勝つかしら。」
 
「質問攻めなら負けないと思うな。」
 
「あっはっは!確かにそうかも知れないわ。あ、そうだ!ねえ、さっきカインの話を聞かせてもらってたって言ってたわよね。」
 
「うん、少しだけどね。」
 
「どんな話?」
 
 妻は興味津々で聞いてくる。
 
「実はね・・・。」
 
 私は、剣士団宿舎の食堂に勤めているらしいチェリルという娘がカインを好きらしいと言うことと、その娘がカインを自慢の手料理でつり上げるつもりでいるらしい話を聞かせた。
 
「おいしい料理ねぇ・・・。ふふん・・・私の腕をそう簡単に超えられるかしら。」
 
 妻は自信満々だ。
 
「それは無理かもしれないけど、だいぶ自信を持っているような話だったから、一度食べてみたいものだね。」
 
「そうねぇ。でも不思議。あんなに騒がしくて落ち着きがないのに、どうしてそんなにもてるのかしら。」
 
「カインは結構みんなに好かれてるみたいだよ。さっきのティナとジョエルって言う剣士達も、すごくいいやつだからって言ってたよ。」
 
「ふぅん・・・。でもそういう話が聞けるのはうれしいわね。親としてはどうしても、一人で知らない町に出て行って、心細い思いしてるんじゃないかなんて考えちゃうものだから。あの性格ならそんなことにはならないだろうなって思うんだけど・・・そう思っててもつい心配しちゃってたのよ。あの子のことだから、きっと誰にでも気軽に声をかけてるんでしょうね。う〜ん・・・わりと罪作り?」
 
 妻は言いながら笑い出した。
 
「罪作りねぇ・・・。あいつには一番似合わない言葉のような気がするけど、そういうことになるのかな・・・。」
 
「それじゃ、城下町に行ったときの楽しみがまた増えたわね。お祭り見物と、カインがライラと行ったって言うコーヒーショップと、剣士団の宿舎の食事!」
 
「お祭りとコーヒーショップはともかく、宿舎に入れるかなぁ。」
 
「オシニスさんに頼んで入れてもらうわ。お昼時ねらっていきましょうか。」
 
「そ、それは・・どうかなぁ・・・。」
 
「あら、遠慮することもないんじゃない?」
 
 妻は楽しそうだ。まあ一度くらいはあの食堂で食事をしてみたいものだと思っていた。昔いた食堂のおばさんはどうしているんだろう。もう辞めてしまったんだろうか。そんな話をしているところにケイティが食事を運んできてくれた。騒動はあったものの、おいしい食事を食べ、風呂にゆっくりと浸かることが出来る幸せを噛みしめながら、私達はそれぞれ、明日訪れる懐かしい海鳴りの祠に思いを馳せていた。
 

第49章へ続く

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