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 『世捨て人の島』から『北の島』という名前になってから、この島には商人も来るようになったし、大道芸や芝居の興行まで来るようになった。去年来たのは、最近城下町で人気を集めているらしい一座で、俳優達もなかなかの美形が多かった。演目は二つほどで、確か敵対する家同士の息子と娘の悲恋物語と、古い冒険小説から題材をとったというドラゴン退治の物語だったと記憶している。悲恋物語のほうは、主人公の二人が実に舞台栄えのする美男美女だったせいか、島の女性達にかなりの人気を博した。内容も女性の好きそうな題材だ。親に結婚を反対された二人は、教会の司祭の助けを借りて、自分達が死んだことにしてまんまと駆け落ちするのだが、だまされたことに気づいた親達に連れ戻される。今度こそ引き裂かれるかと思いきや、実は教会の司祭が二人が駆け落ちしたことを両家の親達に告げて、そこまで思いつめた子供達の気持ちを察してやりなさいと、説教してくれていたことで、めでたく結ばれるという、まあ言うなれば無難なハッピーエンドだ。だがそこにたどり着くまでの見せ方がなかなか見事で、最後まで結末が予想できなかった。もうひとつの冒険物語は、貢物を要求してくるドラゴンのせいで貧しい暮らしをしている村が、お金を出して冒険者を雇う。冒険者は金はもらえるし、ドラゴン退治をすれば名誉も手に入るということで勇んで出かけていくのだが、最後の最後で、なぜかドラゴンと仲良くなってしまうという、ある意味荒唐無稽な、でも子供向けにはいいかなと思えるこれまた無難な内容だ。でも実際にドラゴンと向かい合ったことのある身としては、なんとなく複雑な気分になったことを覚えている。
 
「それでその・・・僕も・・・。」
 
「僕も・・・?」
 
「あんなふうに舞台に立ちたいなと・・・。」
 
「舞台俳優になりたいってことかい?」
 
「・・・うん・・・・。ね?父さんに言ったりしたら絶対に怒鳴られるって思うような話だよね?」
 
「う〜ん・・・・。」
 
 思わず唸ってしまった。確かにグレイが聞いたら顔を真っ赤にして怒鳴りそうだ。しかも一度は『学校の先生になりたい』と言ってしまっているのだからなおさらだ。
 
「確かにその危険性はあるかもなぁ・・・。でもねシンス、俳優って言うのは大変な仕事だと思うよ。どんな困難でも乗り越えてみせるって言うくらいの気概がなければ、とてもつとまらないと思う。本当にそれが自分のやりたいことなら、何が何でも君の父さんを説得しなきゃね。これも試練さ。」
 
「試練か・・・。」
 
「楽して人気が出てお金が儲かるなんて考えているなら、先生は今ここで言うよ『やめたほうがいい』ってね。」
 
「僕にも出来るのかな・・・。」
 
「それは君次第だよ。」
 
「でも向き不向きとか・・・。」
 
「それじゃ、もしも向いてないって誰かに言われたらやめるのかい?」
 
「だってさ、向いてないなら違う仕事につくことを考えたほうがいいじゃないか。」
 
「向いてるかどうかなんてわからないよ。みんな自分のやりたいことを一生懸命やってみて、その結果どうしてもだめだったとしても、それでもあきらめきれずに続けている人達だっているんだよ。何でかって言うとね、その仕事が好きだからさ。向いているかどうかなんて重要じゃないんだ。好きだからやり遂げたい、それだけなんだよ。始める前からうまく行く保障がほしいなんて考えているようじゃ、やっぱり先生は『やめたほうがいい』って言うしかなさそうだね。」
 
「ほらみろ、僕が言ったとおりじゃないか。お前ってさ、あれやりたいこれやりたいっていうわりに、いつも最初から腰が引けているんだよな。失敗したらどうしようとか、うまくいかなかったらかっこ悪いとか、そんなことばかり言ってるじゃないか。始める前から絶対に成功するってわかってることなんてないんだぜ。僕の兄貴だってあんなにきこりが大好きでがんばっているけど、かえって大怪我したりしているしな。」
 
 エディが少し呆れ顔でシンスを突っついた。
 
「だ、だって・・・。」
 
 シンスは今にも泣き出しそうな顔でうつむいた。一か八かの賭けに出ようとするときに勝算がどの程度あるかを見極めようとするのは、生きていくうえで重要なことだと思うが、絶対に成功する仕事なんてものを探し続けているのでは、それこそグレイの心配したように『いつの間にかじいさんになっちまう』危険性のほうが高い。
 
「まあ・・・もう少しよく考えてみることだね。まだ時間はあるんだから、あせらずによく考える事が大事だよ。それからね、先生になりたいって言うのが自分の本当の夢じゃないって言うことを、ちゃんと父さんと母さんに話しなさい。うそをついたままでいてはいけないよ。」
 
「はい・・・。」
 
 シンスはしょんぼりとうなだれた。
 
「一人で言いづらいなら、今日の夜でも君の家に送っていって、一緒に話をしてあげるよ。」
 
「ほんと!?」
 
 シンスがぱっと顔を上げた。
 
「ただし、話すのは君だ。先生は、君の父さんと母さんが怒ったら、怒らないでちゃんと話を聞いてあげるように口ぞえだけはしてあげよう。」
 
「は、はい・・・。」
 
 結局のところ、シンスはいまだ将来についての具体的な展望を持てずにいるらしい。今私がこの若者に対してしてやれることは、グレイとアメリアの怒りを静める手助けをすることくらいだ。それよりも、せっかくエディが来ているのだから、アルバイトのことについて話しておこうと、私はエディに視線を移した。
 
「エディ、君の母さんから聞いたんだけど、ここでアルバイトをしたいってのは君の考えなのかい?」
 
「うん、そうだよ。でも正直言うと、半分は母さんの考えなんだけどね。」
 
「半分は?」
 
「うん。僕が本好きなのを見て、母さんが何か頭を使う仕事が出来たらいいのにねって言ったんだ。でもうちには王国に出て行って勉強できるほどのお金がないから、島で勉強が出来て人の役に立てる仕事って言うと、先生のところかなと思ってさ。それで母さんにここでアルバイトさせてもらえるよう頼んでほしいって言ったんだ。実を言うとね、そのことで今日は先生のところに来るつもりだったんだよ。でも途中でため息つきまくりのシンスに会ったもんだから、話し込んでたら今になっちゃったんだ。」
 
「なるほどね。ひとつ聞きたいんだけど、君は先生の仕事のどんなことに興味があるんだい?」
 
「う〜ん・・・。一口でいえないなぁ。」
 
 エディはしばらく考え込んでいたが、
 
「実際に人の怪我や病気を治すことが出来るって言うのは、きっとすごくうれしいと思うんだ。でも・・・そうだなぁ・・・先生が昔発表した麻酔薬みたいに、今の医学を元から進歩させられるような、そんな仕事のほうが楽しそうだなと思うよ。」
 
「楽しいことばかりじゃないよ。」
 
 子供の夢を聞いているというのに、思わず即座に言葉を返してしまった。医者としての勉強と研究と、そればかりに気をとられていたおかげで、私はかけがえのない大事なものを失うことになった。その痛みが消えることはおそらく一生ないだろう。だが、エディは私の言葉を気にとめなかったらしく、少しだけ不思議そうに首を傾げただけだった。
 
「僕はきっと楽しいと思うよ。いい薬があれば、治らなかった病気も治せるようになるよね。そうしたらきっと、みんなが楽しく幸せに暮らせるじゃないか。」
 
「そうだね・・・・。ところでエディ、君は何か呪文は使えるのかい?」
 
「使えるよ。」
 
 即答されて、私は少し面食らった。この若者が何かしらの呪文を使えることなど、聞いたことがなかったからだ。
 
「誰に教わったの?」
 
「ライラだよ。」
 
「そうか・・・。」
 
 エディとライラの仲が良かったことを、私はすっかり忘れていた。
 
「でも呪文は難しいね。ライラがいなくなってからはぜんぜん練習してないけど、『自然の恩恵』だっけ?それはもういつでも唱えられるよ。でも先生、先生の仕事を手伝うのに、呪文は必ず必要なの?」
 
「なければ手伝えないということはないけど、今のところは出来るだけあってほしい技術だね。」
 
「どういうこと?」
 
「君がさっき言っていた麻酔薬のように、呪文に頼らずに怪我や病気を治せる方法が今後増えてくれば、呪文に頼る必要はなくなる。でも今の時点の医学はまだまだ呪文に依存しているんだよ。」
 
「それじゃさ、呪文に頼る必要がなくなるくらい、医学を進歩させればいいってこと?」
 
「単純に言えばそうだね。治療術の呪文は、かけてもらうだけでとんでもないお金がかかるのが現状だ。王宮勤めの司祭達は無料でかけてくれるらしいけど、それだけの人数で王国の国民をすべて面倒見られるわけじゃないしね。だから薬や技術で怪我も病気もちゃんと治せるようになれば、お金がないばかりに命を落とすなんて人達はずっと減ると思うよ。ただし、そう簡単にはいかない。怪我はともかく、病気は根本的な原因を突き止めないと治療のしようがないからね。」
 
「そうかぁ・・・。それじゃここでアルバイトしながら、呪文の勉強もしたほうがいいかなあ。」
 
「君しだいだよ。」
 
「僕しだい?」
 
「そうだよ。君がどこまで勉強したいかによるってことさ。呪文の勉強をしたいのか、医者の勉強をしたいのか、でなければ医学の進歩を助ける研究をしたいのかだね。」
 
「う〜〜ん・・。そこまで考えなかったなぁ。」
 
「今から決める必要はないよ。君はシンスと歳も違わないし、まあとりあえず、アルバイトとして手助けをしてくれればいいよ。」
 
「そうだね。また考えてみるよ。」
 
 エディはけろりとしている。このくらい明るく考えていたほうがいい。将来のことなんて、誰にもわからない。
 
「お前はいいよなぁ・・・。ある程度の目標が決まってるし・・・。」
 
 隣で黙って聞いていたシンスがため息をついた。
 
「あはははは!僕はお前と違って、親に期待されてないからね。うちの母ちゃんは僕がとにかくまじめに働いてくれればいいって。もっとも父ちゃんはちょっと残念そうだけどね。」
 
「どちらも漁師は継ぎそうにないからだね。」
 
 エディとラヴィの父親は漁師だ。こんな北の海でも魚は結構獲れる。だがなぜか漁師を職業とする人達はほとんどが東の村に住んでいる。船着場は東の村にはないので、漁師達はここの船着場から漁に出かけていく。今の時期は漁の最盛期で、船に食料をたくさん積んでかなり遠くまで出かけていくらしい。一番最近出かけたのが一週間ほど前だから、確かあと3日ほどで戻ってくるはずだ。漁業もまた島の産業のひとつなので、漁を終えた船は一度ローランに立ち寄り、ローランの仲買人達に獲れた魚介類をある程度売りさばいてくる。残りは島の住民達の食卓に並ぶことになるので、島の住民達の誰もが、新鮮な魚介類を豊富に運んでくれる漁船の帰還を心待ちにしているのだ。
 
「そういうこと。兄貴はもうダンさんの跡取りのつもりでいるしね。でも漁師はうちの父ちゃんだけじゃないからね。別に後継者に困っているわけじゃないし、仕方ないかなって言ってるよ。」
 
「困ってないとしても、確かに君の父さんとしては残念だろうな。」
 
 息子がここを継いでくれたらと、私自身も考えなかったわけじゃない。でもきっと無理やり押し付けるような形で継がれるのはいやだと思う。それはエディの父親も同じなんじゃないだろうか。その気持ちはよくわかる。
 
「期待されていないってのはうらやましいよ。うちの両親は何であんなに僕に期待をかけるのかなぁ・・・。」
 
「どんな親だって子供に期待はするよ。エディのご両親だってそうだよ。ただ、君の父さんと母さんほどそれを表に出さないだけじゃないかな。実際エディだって、まじめに働いてくれれればって言う期待はされているわけだろう?」
 
「あ、そういえばそうか。」
 
 エディは今初めて気づいたようにへへっと笑って肩をすくめた。明るくて屈託のない若者だが、妻が言ったとおり、医者としてよりも研究者として向いているような気がする。研究なんてものはいつまでに完成すると決まっている物を作るわけじゃない。失敗ばかり繰り返し、何もかもいやになることだってある。この若者なら、そんなときにも上手に気分転換をして仕事を続けられそうだ。案外こういうタイプの若者が、大発明をしたりするのかもしれない。
 
「それじゃエディ、君のアルバイトは、先生達が王国から戻ってきてからでいいね。」
 
「そうだね。いつ帰ってくるの?」
 
「だいぶ先だろうな・・・。南大陸まで行くことになっているからね。」
 
「へえ・・・。あ、もしかしておばさんの家に行くの?」
 
 エディが妻に振り向いた。
 
「ええそうよ。久しぶりにおばさんのお母さんに会ってくるの。だから帰ってくるのは一ヶ月以上先になると思うわ。」
 
「ふぅん。その間ブロムさん一人?」
 
「そうだよ。もしもけが人が出たりすれば、サンドラさんとアローラが手伝ってくれることになってるよ。」
 
「僕ではだめかなあ。呪文くらいなら手伝えそうだけどな・・・。ちょっとした怪我くらい治せちゃうんだけどな・・・。」
 
「ちょっとした怪我なら、呪文は必要ないからね。」
 
「そうだよね・・・。」
 
 命にかかわる大怪我などであれば、とりあえず命の危険がなくなる程度までは呪文に頼って治すのだが、小さな怪我などはごく普通に傷の手当をするだけだ。患者達の中には
 
『呪文でちょいちょいと治してくれ』
 
『ケチらずに呪文をバンバン使ってくれよ』
 
などという人達も少なくない。だが私は、そんなときは遠慮なく断ることにしている。時には怒ることもある。すると『もったいつけてる』とか、『金ならいくらでも出す』などと言い出す。中には、私達がお金目的で呪文を出し惜しみしているなどと言う人達までいる。もちろん、古くから島に住んでいる人達はそんなことは絶対に言わないが、観光で島にやってきた人や、最近引っ越してきた人達とはこの手の揉め事がよくある。ちょっとした怪我を治す程度の呪文なら、私自身は体力が落ちるわけでもなければ疲れて診療が続けられなくなるなどということもまずないのだが、一番困るのは『いくら怪我しても呪文をかけてもらえば治る』と思われることだ。治療術は、おとぎ話に出てくるような魔法ではない。使えない人から見れば不思議に見えるというだけで、気の流れをうまく集めて治癒力を飛躍的に高めるだけなので、大怪我をして瀕死の状態の時にうっかり高レベルの呪文を使ったりすると、かろうじて命をつなぎとめている気の流れまで奪い取ることになってしまうので、怪我は治ったが死んでしまうなどということにもなりかねないのだ。そんなわけで、うちの診療所ではそう簡単に呪文は使わない。ファーガス船長のように、手遅れになる寸前で担ぎこまれてきたのに『明日仕事をしたいから呪文でパパッと完治させろ』などとむちゃくちゃなことを言う患者にはなおさらだ。無論そんなことを言う患者には、妻の雷が落ちる。
 
「ねえクロービス、私達が留守の間、呪文に限ってのお手伝いということで、ブロムさんにお願いしてみたら?」
 
 ずっと黙って聞いていた妻が口を挟んだ。ちょっと意外だった。妻はエディを『医者には向かない』とほとんど言い切っていたのだから。
 
「呪文に限って?」
 
 エディが不思議そうに尋ね返した。
 
「そうよ。傷の手当なんかは慣れないとかえって足手まといになるだろうけど、大怪我をする人だって出ないとは限らないわ。そんなときに自然の恩恵なら、日常生活に支障がない程度の状態まで治療することは出来るでしょ?呪文に関してはブロムさん一人じゃ心配だから、私はエディにお願いしたいわ。ねえエディ、どう?」
 
「ぼくで役に立てるのかな・・・。」
 
 エディは急に不安げな表情になった。やはり現実に自分の呪文でけが人を治すことになるかも知れないと思うと緊張するらしい。
 
「試しに唱えてみてくれるかい。」
 
 エディはうなずいて、何度か呪文を唱えた。思ったよりしっかりと唱えられるようだが、持久力はあまりないかも知れない。
 
「ふぅ・・・これだけで疲れるなんて、まだまだだなぁ・・・。ライラなんてもっと難しい呪文だって平気で唱えていたのに・・・。」
 
「きっとライラは、一生懸命練習したんだよ。」
 
「南大陸へ行くためにだね・・・。」
 
「そうなんだろうね。」
 
「僕もっと練習するよ。ブロムさんにも教えてもらう。けが人の治療の最中にぼくがひっくり返っていたら、結局足手まといになっちゃうものね。」
 
「気持ちはわかるけど、無理は禁物だよ。呪文に限らず、そんなに簡単に上達できるわけじゃないんだからね。」
 
「はい。」
 
 エディはうれしそうに返事をした。
 
 
 
「ねえ先生。」
 
 エディの横顔をうらやましそうに見ていたシンスが、少し改まった口調で話し出した。
 
「なんだい?」
 
「今日家に帰ったら、父さんと母さんに話してみる。父さんはたぶん怒るだろうけど、言いたいことを全部言ってみるよ。どんな仕事につくにしても、僕は自分の考えで決めたい。今のままじゃ何をするにも中途半端だものね。」
 
「それがいいよ。君の父さんがあんまり怒ったら、そのときは先生が少しなだめてあげるよ。そのくらいなら手助けできると思う。」
 
「ありがとう。でも先生の手を借りなくてもすむようにがんばってみる。」
 
「そうか。では健闘を祈るよ。」
 
 シンスは神妙に頭を下げた。自分と歳の違わないエディが、思ったより自分の将来についていろいろと考えていたことを知って、さすがにシンスも今までのようにふらふらしていられないと考えたらしい。シンスにも成長の『時』が訪れたということなのだろうか。今はただ黙って見守ってあげよう。
 
「シンス、僕はもう帰るよ。今から出ないと暗くなっちゃうからね。」
 
 エディが腰を上げ、シンスも一緒に帰るといって、二人は出て行った。『王国から帰ってきたらまた訓練してるところ見せてね』と言いながら。
 
 
 
「なかなか難しいわねぇ・・・。カインはずーっと昔から王国剣士王国剣士って騒いでたから、子供の仕事のことでこんなに大変な思いをするものだとはぜんぜん考えていなかったわ。」
 
 カップを片付けながら、妻がつぶやいた。確かに、うちではもうずっと昔から『うちの息子は王国剣士になる』という思い込みがあったような気がする。人に聞かれれば『まだ子供だから』とか、『本気かどうかわからないよ』と言っていたが、それでも王国剣士の採用試験のことなどは、カインに話して聞かせたことがなかった。本気で目指すつもりなら知らないほうがいいだろうと考えてのことだ。私も心のどこかで、カインが王国剣士となってくれることを期待していたのだろうか。
 
「そうだなぁ・・・。確かにカインの仕事のことで悩んだ記憶がないな。」
 
「それにしても舞台俳優だなんて、シンスがねぇ・・・。」
 
「合わないと思う?」
 
「あら、そんなことないわ。俳優さんと言ったっていろんなタイプの人がいるじゃない?後は本人のがんばり次第だと思うわよ。」
 
「でもああいう仕事は人気がすべてだからなぁ。いくら本人が努力しても、人気が出なくて消えていく人達もいるじゃないか。」
 
「そうね。でもその考え方はさっきのシンスと同じだわ。人気が出るかどうかなんてわからないもの。最初からうまくいく保障をほしがるなんて、その時点でやめたほうがいいってことじゃない?」
 
「まあ・・・そうか・・・。」
 
「ふふふ・・・。私達くらいの歳になればともかく、シンスみたいな若い子が保障を先にほしがるなんて、なんだか悲しいわよね。」
 
「ははは・・・そうだね・・・。でもグレイがなんていうかなあ。人の手を当てにしないで説得出来ればたいしたものだけどね。」
 
「期待しすぎないようにするなんて言ってたくせに、シンスが先生になりたいって言ったとたんに二人とも態度が変わっちゃったものねぇ。特にアメリアが喜んでいたみたいだから、ちょっと心配かなぁ。」
 
「明日の朝、訓練の前にでも顔を出してみようか。」
 
「そうね。様子を見るだけならいいわよね。」
 
 
 
 
 翌日の朝、二人でグレイの家を訪ねた。
 
「おはよう。」
 
 見ただけですっかり疲れた顔のグレイが出てきた。
 
「おはよう。だいぶ疲れてるね。夕べ怒鳴りすぎた?」
 
「・・・散々怒鳴ったけどな・・・。負けた・・・。」
 
「誰に?シンスに?アメリアに?」
 
「両方だ・・・。」
 
 グレイは大きなため息をついた。中に入るとまた長くなるので、そこで少し話を聞いたが、夕べシンスが舞台俳優になりたいと言い出して、やはりグレイもアメリアも怒ったらしい。特にアメリアはすっかり息子が教師になると思い込んでいたので、それが自分達の顔色を伺っての嘘だと知って怒りながら泣き出したそうだ。いつもなら、アメリアが怒ってグレイが怒鳴って、シンスは結局黙り込んで部屋に逃げ帰ると言うことになるのだが、夕べはどうも様子が違っていた。シンスがどうしても引き下がらないのだ。そしてなんと、城下町にある有名な劇団の養成学校に入りたいと言い出した。もしかしたらシンスは、すでにそこまで考えていたのかもしれない。でもどうしても言い出せずに、親の顔色を伺っては無難なことばかり言って将来の話をうまく交わしていたらしい。シンスにとって、カインもライラも自分より年上で、彼らが一生の仕事を見つけたからって自分はまだまだと言う安心感があったと思う。だから彼らと自分は違うと、不満げに言っていたのだろう。だが昨日のエディの話は、やはり彼の心に響いたようだ。そんな息子の姿を見て、アメリアがシンスの援護に回った。母親としては息子に無難な職についてほしいと思うが、夢を追わせてやりたい気持ちもあるからいまはシンスを応援したいと、なんとグレイに向かって土下座せんばかりの勢いだったそうだ。これではグレイも折れざるを得なかったろう。
 
「へぇ・・・するとシンスの将来もこれで決まり?」
 
「まあ・・・一応その学校についていろいろ調べてみて、間違いなさそうなところだったら行かせてやるとは言ったよ。後は金の問題だな。はぁ〜・・・・いくらくらいかかるのかなぁ。」
 
 村長という仕事をしているグレイの家の生活費は、島の財源から毎月決まった額が支給される。暮らしていくためには充分なお金だが、そんなに余裕があるわけではないらしい。最も夫婦二人に子供が三人だ。これからもますますお金はかかるだろう。だが立場上、またグレイの性格上、足りないからもっとくれなどとは絶対に言えないんだろうと思う。
 
「なあクロービス、頼んでいいか?」
 
「なにを?」
 
「シンスが言っていたその養成学校について、向こうでの評判を聞いてきてほしいのさ。アメリアの奴も妹に手紙で訊いてみるって言ってたけど、祭りの間は手紙が届くのも遅くなるからな。」
 
「わかったよ。聞いてきてみる。お金のほうもちゃんと調べてくるから心配しないで。こっちに戻るのは遅くなりそうだから、向こうから手紙を出すよ。」
 
「悪いな。頼む。」
 
 私達はグレイの家を出て、そのままラスティの店に向かった。店はもう開いていて、店頭ではラスティが今日入荷した品物を並べているところだった。頼んでおいた品物のことを訊くと、ちょうど今日入ってきたとのことだったので、このまま荷物をもらって帰ることにした。
 
「代金は明日の朝でも寄って置いていくよ。」
 
「明日は出かけるんだな。」
 
「うん。」
 
「土産話を楽しみにしてるぜ。」
 
 ラスティはそう言って、いきなり私の頬をつまんで思い切り引っ張った。
 
「いた!な、なに!?」
 
「帰ってくるころには、もう少しすっきりしてるといいな。」
 
「ラスティ・・・・。」
 
「なんて顔してんだよ。花の都へ祭り見物だぜ?もっと楽しそうな顔しろよ。」
 
「うん・・・。すっきりしてくるよ。カナの人達にもみっちり怒られてこないとね。」
 
「まったくだ。覚悟していけよ。」
 
 ラスティは大声で笑った。
 
 
 
「はぁ・・・私達って、よっぽど死にそうな顔してたのねぇ。」
 
 帰り道、妻がため息をついた。
 
「自分の顔がどんな状態かなんて、考えている余裕もなかったからね・・・。」
 
「ふふふ・・・・そうね・・・。でもね、私、ここに帰って来てすごくよかったなって思ってるのよ。」
 
「そう思ってくれるの?」
 
「もちろんよ。ここは確かにとても寒いところだけど、住んでいる人達はみんな温かいわ。私達の気持ちを思いやってくれて、ただ『お帰り』って笑顔で言ってくれて・・・。すごくうれしかったわ。」
 
「そうか・・・。」
 
 一度は落ち着こうと決めた剣士団も城下町も、私達がいるだけで騒動が起こった。逃げるように城下町を離れたが、あのころはまだ島への船も出ていないころだったから、帰ってくるにはあの海底洞窟を通るしかなかった。じめじめした凍るように寒い洞窟を抜けて井戸から出たとき、ちょうどサンドラさんの家からイノージェンとサンドラさんが外に出てきたところだった。二人とも最初驚いたように目を見張ったが、すぐに笑顔になって『お帰り』と言ってくれた。二人の笑顔が、泣きたいくらいうれしかったことを今でも覚えている。
 
「あれから20年か・・・・。」
 
「いつの間にかそんなに過ぎていたのねぇ。」
 
「そうだなぁ・・・・。歳を取るわけだ。」
 
 妻が笑い出した。
 
「いやあねえ、老け込まないでよ。」
 
「大丈夫だよ。老け込んでる暇はまだまだなさそうだからね。」
 
「それもそうね。」
 
「だから、みんなにちゃんと納得してもらえるように、すっきりして、笑いが止まらないくらいになって戻ってこないとね。」
 
「でも意味もなく笑ってたらかえって変だわ。」
 
 そんな他愛のない話をしながら家への道を歩いていた私達は、道の向こうから誰かが走ってくるのに気づいた。この道をまっすぐ行くと岬へと続く道に出る。よく見るとなんとそれはシンスだった。
 
「あ、先生、おばさん、おはようございます。」
 
「おはよう。」
 
「おはよう。ずいぶん早いのね。」
 
 妻が驚いたように声をかけた。こんな時間にシンスが外にいるところなど、私も見たことがない。
 
「うん。今日から体力作りだよ。」
 
「体力作り?」
 
「そうだよ。夕べ父さんと母さんが、とうとうぼくの言い分を認めてくれたんだ。学校に入れるかどうか調べてやるって言ってたから、それまでに体力をつけておかないとね。役者ってのは体力勝負だって、この間来た一座の人達が話していたんだよ。」
 
「なるほどね。でも無理してはいけないよ。昨日の呪文の話とおなじで、いきなり体力がつくわけじゃないんだからね。」
 
「わかってるよ。今日は第一歩だからね。もう帰るところなんだ。今日はダンさんの仕事も少し手伝ってみようかと思ってるんだよ。」
 
「そうか。それじゃ、気をつけるんだよ。」
 
「は〜い。またね。」
 
 シンスはうれしそうに走っていってしまった。
 
「すごい変わりようねぇ。」
 
 妻はすっかりおどろいて、シンスの後ろ姿を見送っている。
 
「目標が出来たからだろうね。うまく行くといいんだけど・・・。」
 
「そうねぇ、うまく行くことを祈りたいわ。」
 
「ま、私達が出来ることは、その養成学校とやらをちゃんと調べてくることだからね。せめてシンスが思い切り勉強できるように協力してあげようじゃないか。」
 
「そうね。」
 
 家に戻って、私達は早速訓練を始めた。あまり夢中にならないように気をつけながら昼まで立合を続け、その日の午後は、岬に行って『本格的な』立合をすることになった。家の庭だと、またダンさんのような慌て者がでないとも限らない。
 
 
 
 岬の風は心地よい。たまに強風が吹く時もあるが、今の季節は比較的穏やかだ。
 
「さてと、始めようか。」
 
「では、お願いします。」
 
 お互い笑顔で礼をして向かい合った。ドリスさんが直してくれた鎧は、どんなに動いても少しもずれてこない。今度こそ本気の立合が出来そうだ。妻がかまえる。私もかまえる。ピンと空気が張りつめる。今度は『どちらから斬り込む』なんて打ち合わせはない。タイミングを慎重に計って、いかにして相手に手痛い一撃をたたき込むかの策を巡らせる。妻が動いた。誘うように鉄扇が弧を描き、シャランシャランと音をたてる。そのまま動かずに、妻の動きを目で追う。鉄で出来ているとはとても思えないほど、鉄扇の動きは優美で美しい。と次の瞬間、鋭い風斬り音と共に鉄扇の先が耳元をかすめ、私の肩を直撃した。だがそれほどのダメージはない。私を動かすための妻の作戦なのだ。ただじっと見ていられては、動きを見切られてしまう。動けば集中力はとぎれる。せっかくの誘いに乗ってみるのもいいだろう。振り下ろされる扇をはじき返す。さっと下がって構え直した妻がにやりと笑った。私が動き始めたことで、今度は妻が私の動きを見切ろうと動きを止める。少しずつ相手の動きが見えてきた。ほんのわずかの隙をついて、攻める。はじく。また攻める。今度はかわす。無駄な動きは体力の消耗を招く。必要最小限の動きで、相手をいかにして誘い出し、防御を崩すか。
 
(・・・そろそろ行こうかな・・・・。)
 
 にらみ合いばかりでも訓練にならない。思い切り大胆に、妻に攻撃をしかけた。妻は余裕の笑顔ではじき返す。やっと本格的に動けることを喜んでいるようだ。そしてまた、私達の意識は目の前を踊る剣と扇にとらえられ、もうなにも考えず、ひたすら動き続けた。
 
 
 
「はぁ〜・・・疲れたぁ・・・・。」
 
「さすがにがんばりすぎたかなぁ・・・。」
 
 夕方、私達は二人で岬に寝転がっていた。長い長い立合の末、私は危うく剣を取り落としそうなほどの妻の一撃を受けた。だがかろうじて剣は手の中に残り、結局今日は引き分けとなった。気がつくと二人とももうふらふらで、立っていることも出来ずに座り込み、体を起こしているのもつらくなって寝転がっているというわけだ。
 
「もう夕方ねぇ・・・。」
 
 空の色は少しずつあかね色に染まり始めている。
 
「もう少し休んだら帰ろうか。今日はさすがにがんばりすぎたなぁ・・・。明日の朝一番の船で出掛けようかと思ったけど、昼の船にしようか。」
 
「そうねぇ・・・。ローランに夕方着ければあの村で一晩泊まれるわよね。」
 
「そうだね・・・。そうしよう。」
 
 少しの間二人ともそのままぼんやりと空を眺め、ある程度疲れがとれたところで体を起こした。そのころには空は半分ほどが藍色に染まって、星が瞬き始めていた。こうなるともう寝転がってはいられない。汗が冷えて風邪をひいてしまう。
 
 
 家に戻って扉を開けると、いい匂いが漂ってくる。
 
「あ〜ぁ・・・またブロムさんに迷惑かけちゃったみたいね・・・。」
 
「仕方ないよ。本人も楽しんでいるみたいだし、好意に甘えよう。」
 
「そうね・・・。たくさんおみやげ買ってこなくちゃね。」
 
「ははは・・・そうだね。」
 
 着替えをする前に私達は台所へと向かった。リビングの扉を開けると、誰かいる。
 
「やぁ、おかえり。大変そうだな。」
 
 そこにいたのはラヴィとエディの父親であるダグラスだった。元々東の村の人間で、歳は私よりいくつか上だ。漁師らしい逞しい体つきだが、とても優しげな顔立ちをしている。二人の息子のうち、兄のラヴィは体格を、弟のエディは顔立ちを受け継いだらしい。
 
「珍しいね。どこか具合が悪かったの?」
 
「いや、うちの息子達のことでいろいろと話を聞きたかったんだが、なんだか忙しいみたいだな。王国に祭り見物に行くそうじゃないか。」
 
「うん。それでしばらくぶりで剣を振り回したらなんだか疲れちゃってね。少し岬で休んでから戻ってきたんだよ。ブロムさんとは話した?ラヴィの症状については、私よりブロムさんのほうが詳しいよ。」
 
「ああ、ラヴィのことはいろいろ教えてもらったよ。今のところ地道にリハビリやっているみたいだし、落ち着いていろいろ考えるいい機会だと思ってるんだ。」
 
「そうか。教えた通りにちゃんとリハビリをしていれば、必ず元通りになるよ。」
 
「ああ・・・ありがとう。」
 
 ダグラスが頭を下げた。
 
「それじゃエディの話をする前に、ちょっと着替えてくるね。」
 
 二人で急いで着替えをすませてリビングに戻った頃には、思った通りブロムおじさんが出来上がった食事を食卓に並べているところだった。
 
「おじさん、ごめんね。また世話になっちゃったね。」
 
「ブロムさん、ごめんなさい・・・。私がもっと早く戻ればよかったんだけど・・・。」
 
 妻がすまなそうに頭を下げた。
 
「気にするな。たまには料理も作っておかないとな。ボケ防止にはいいかもしれんと思ったのさ。」
 
 おじさんが笑った。
 
「ぼけるのはあと何十年かあとにしてよね。まだ早すぎるよ。」
 
「はっはっは!そりゃそうだ。さてと、ダグラス、あんたも食っていかんか?クロービス達は多分腹ぺこだろうから、目の前で食べ終わるのを待っていられるのも気になるしな。」
 
「う〜ん・・・それじゃ少しだけいただくかな。間が持つ程度にな。」
 
 ダグラスは頭をかきながら食卓についた。
 
 
 食事を終えて、ブロムおじさんは明日の朝は早く来るからと言い残して帰って行った。妻がいれてくれたお茶を飲みながら、ダグラスが少し真剣な顔で話し出した。
 
「ラヴィのことは感謝してるよ。ずいぶんといろいろ気を使ってもらったって、ミレルの奴から聞いたんだ。それに、今度はエディの奴もここで働かせてもらうことになったみたいだが、どうなんだ?あいつは役に立ちそうなのか?」
 
「正直言ってまだわからないよ。うちの仕事にかなり興味はあるみたいだけど、なんと言っても医療に関しては素人だからね。だから本当は私達が帰ってきてから来てもらう予定だったんだけど、昨日聞いたら呪文が使えるって言うから、大けがをした人が出たりした時は、少し手伝ってもらえるかなって頼んだんだよ。」
 
「そういうことだったのか・・・。しかしあいつが呪文を使えるなんて、俺は今の今まで知らなかったんだよなぁ・・・。」
 
「家族の中で誰か使える人はいないの?」
 
 ダグラスは大げさに肩をすくめてみせた。
 
「まるっきりさ。ただ、ミレルのじいさんがちょっとだけ使えたような話を聞いたことがあるから、そっちの血を引いているのかもな。」
 
「そうか・・・。で、君としてはどう考えているの?」
 
「どうって・・・。」
 
 ダグラスは口ごもった。
 
「正直に言ってくれていいよ。本当はラヴィとエディのどちらかに漁師を継いでもらいたいんじゃない?」
 
「・・・まあな・・・。でも多分あきらめるしかなさそうだよ。ラヴィの奴はもうダンさんの跡取りだって大騒ぎだし、エディの奴は漁師そのものに興味がなさそうだしな。」
 
「ライラと仲が良かったからね。本が好きみたいで昨日もうちで何冊か読んでいったよ。」
 
「はぁ〜・・・俺の息子がなんだってあんなインテリタイプになったもんだか・・・。とにかくクロービス、よろしく頼むよ。甘ったれたことを言いやがったら、遠慮なくガツンとやってくれ。どんな仕事に就こうと、真剣勝負なのはおなじだからな。」
 
「そうだね。甘やかしたりしないよ。どんな仕事でもそうだけど、私達の仕事はとにかく失敗が許されないからね。」
 
「そうだな・・・。」
 
 そのあと少しの間、他愛のない話をしてダグラスは帰っていった。こんな風に彼といろいろ話したのは、もしかしたら初めてかも知れない。私が昔この島にいた頃は、島の中の集落同士の交流などほとんどなかった。私と彼が顔見知りなのは、みんなが一度くらいは島で唯一の診療所に患者として来たことがあるからだ。
 
「ダグラスって見かけより穏やかなのね。」
 
 妻がふふっと笑った。
 
「見かけもそんなに恐そうには見えないじゃないか。」
 
「近くで見ればとても優しい顔立ちなんだけど、あの体格だもの。遠目に見ていた時は少し恐い人なのかと思ってたわ。」
 
「ははは。それじゃ、今日は思いがけず彼の本当の姿がわかって良かったってところかな。」
 
「ふふふ、そうね。さてと、早くお風呂に入って寝ましょうか。ブロムさんのおかげでせっかく手間が減ったんだから、せめて早く休んで疲れをとらないとね。」
 
「そうだね。今日は早く寝よう。」
 
 明日はいよいよ出発する。王国へ。あの懐かしい、そして悲しい思い出のある場所へ。
 
 

第46章へ続く

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