グラディスとガウディは、剣士団長と副団長を疑っている。剣士団長ドレイファスと副団長デリルは、本当に悪事に手を染めているのか、それではグラディス達が詰所を出た後2人はどうしていたのだろうか。ここで少しだけ時間を戻してみよう。
ガウディとグラディスが慌てて詰所を出たあと、ドレイファスも腰を上げた。刺された男を家まで送っていったデリルは、王宮に戻ってくるだろう。自分も早めに戻らなくてはならない。
王宮に戻って剣士団長室の前に来たが、誰もいない。デリルも若い剣士達もまだ来ていないようだ。
「ふう、間に合ったな。命じておいて自分の方が遅く着くのでは決まりが悪いからな。それじゃ先にガウディ達の予定について話しておくか。」
ドレイファスは採用カウンターに赴き、当番の剣士にガウディとグラディスの予定について話した。
「・・・というわけだ。私の用事で少し早めに上がってもらったから、怠けているなんて誤解しないでやってくれよ。」
「事情はわかりました。でもあいつらからは何も聞いていないんですよ。それは注意しても問題ないですよね。」
当番の剣士はついさっき、グラディスとガウディが採用カウンターの前を通るのを見かけたばかりだ。日勤の勤務時間が終わるにはまだ早い。何かあったのかと声をかけようとしたのだが、2人ともカウンターから顔をそむけ、せかせかと早足で通り過ぎて行ってしまった。まるで『出来るだけ声をかけられたくない』とでも言わんばかりに。さてはさぼっているのを見咎められたくないと言うことかと、当番の剣士は怒っていた。夕方まで待って何も言ってこなければ、こちらから怒りに行こうかと考えていたほどだ。
「もちろんだ。どんなに急いでいても、踏むべき手続を飛ばしてはいかんからな。そこはきちんと言ってやってくれ。」
「わかりました。団長の御用が終わった頃にでも声をかけてみます。」
これでいい。ドレイファスは当番の剣士に『私が頼み事をしたから』としか言わなかったが、特に不審に思われることはなかったようだ。
「さて、そろそろデリルが戻る頃合だな。」
ドレイファスは剣士団長室の鍵を開け、いつも座っている椅子に腰掛けた。
「失礼します。」
そこに扉がノックされた。
「おお、開いているぞ。入れ。」
剣士団長室の扉が開いて、入ってきたのは副団長のデリルだ。
「どうだ?」
「ええ、無事に送り届けてきましたよ。家もわかりました。」
「そうか・・・。あの男の家族は何人だ?」
「女房と子供が1人だそうです。子供はまだ小さいので、母親と一緒にいるようですよ。」
「そうか・・・。あの男は家族には何も言ってなかったのだな?」
「ええ。でもさすがに何も言わず『外に出ないでくれ』とも言えませんから、私のほうからある程度事情は説明してきました。最もあの男もその会合を盗み聞きしたあとは平静ではいられなかったらしく、奥さんは『やっぱり何かやらかしたのね』と怒ってましたよ。もしかしたら今頃は、こっぴどく怒られているかもしれませんね。」
「ふうむ・・・。確かに何も事情を説明しないわけにはいかんからなあ。ま、何事もないならそれに越した事はないのだがな・・・。」
「そうですね・・・。あの2人はこれからここに来るのですか?」
「ああ、今頃焦ってここに向かっているだろう。少し煽りたててしまったからな。」
「・・・ではパーシバルにはそのあとに?」
「うむ・・・。気の重い話だが、仕方あるまい。」
「そうですね・・・。うまく行くといいのですが・・・。」
「そうなってほしいが、こればかりは蓋を開けてみないとわからぬ。」
「私はパーシバルを信じていますよ。彼ならばやり遂げるでしょう。もちろん、何事もないのが一番なのですが・・・。」
「無論だ。」
ドレイファスがうなずいた。
「では私は訓練場に顔を出して、時間になったら上がります。」
「ああ、今日の事は明日また改めて話をしよう。」
「はい、失礼します。」
デリルが剣士団長室を出たあと、ドレイファスは大きなため息をついて深く椅子にもたれた。
「団長となるからには、資質は見極めさせてもらわなければな・・・。」
パーシバルとヒューイのコンビは、若手ナンバーワンと称されいているが、その功績が全てヒューイのものだと、パーシバルは思いこんでいる。確かにヒューイの問題解決能力はずば抜けている。頑固で人の助言をなかなか受け入れない事もあるが、実力は申し分ない。しかし・・・
「パーシバルの力は、本当ならヒューイとそう変わらんのだ。なのに本人がまったくそのことに気づいていない。いや、認めようとしないのかもしれんな・・・。」
パーシバルは礼儀正しく、何より優しい人間だ。ヒューイのように、場合によっては非情に徹する事が出来ないために、ヒューイの行動力の陰に隠れがちである。
「だが・・・今回ばかりはそうはいかん・・・いや、いかんかもしれない・・・というところか・・・。」
ドレイファスは難しい顔で考え込んでいたが、その思考は扉をノックする音でとぎれた。
「失礼します、ガウディ・グラディス組参りました。」
「開いているぞ、入れ。」
若い剣士達を中に入れ、ドレイファスは誰にも盗み聞きされないよう、ぴたりと扉を閉めた・・・。
グラディスとガウディは採用担当カウンターに来ていた。部屋の中で二人で気まずく考え込んでいるところに、採用当番の先輩剣士がやってきた。今日の昼間、やけに早く王宮に戻ってこなかったかと確認されたのだ。団長の用事で早めに上がったんですと言ったが、考えてみればそういう予定の変更は届出しなければならない。2人はそんなことも忘れていた。そこで今日の予定の変更を届け出るために、採用担当カウンターにやってきたのだ。
「団長からさっき話はあったぞ。だがこう言うことは、戻ってきた時点でお前達がここに届けなくちゃならないんだからな。これからはもう少し気をつけてくれよ。」
「すみませんでした。」
当番の先輩剣士に頭を下げて、グラディスとガウディは自分達の部屋に戻ってきた。今回はしっかりと鍵をかけた事を確認したし、部屋の中のチェストはきちんと閉めて出掛けたが、戻ってきた時に特に変わった様子はなかった。やはりさっきの事は、慌てて動いている間に自分が鍵を閉めたか、抽斗を閉めたか、うろ覚えでいたせいなのだろうか。
「・・・ま、何事もないのが一番だ。風呂に行くか。」
「そうだな・・・。」
ガウディの元気がない。
「どうした?」
「いや・・・なんでもない。」
ガウディはため息をつきつき、首を振った。何か言いたい事があるらしいが、言わないと言う事は、それを聞けば俺が怒るかも知れないからかもな、グラディスはそんな事を考えた。まあ仕方ない。言いたくないなら、無理して聞く気もない。そうは思っても、ガウディのこんな態度にはイライラさせられる。舌打ちしたいのを我慢して、グラディスは鎧を外して制服を脱ごうとしたが、その時、胸元でかさりと音がした。
(・・・ん、なにか・・・あ!?)
それは今日の昼間、ローディを助けた時に彼が持っていた手紙だった。しっかりと握りしめられていたその手から、破けないようにそっと抜き取り、懐に入れておいた事をすっかり忘れていた。中を開いてみた。思った通り、そこに書かれていたのは、ローディが昼間話したのと同じ話だった。名前も住んでいる場所も書かれている。どう言う意図かは分からないが、あの男はこの手紙を予め用意して約束の場所に来たのだ。
(よかった・・・。これで、俺の手にもまだ『証拠』と言えるものが残っている・・・。)
「おいガウディ。」
「なんだ?」
ガウディはうるさそうに返事をした。
「昼間あのおっさんが倒れた時、手に握りしめていた手紙があっただろう。」
「ああ・・・あったな・・・。」
気のない返事をしたガウディだが、突然ハッとしたように顔をあげた。
「そうだ!その手紙はどこだ!?」
これにはグラディスの方が驚いた。
「なんだよ急に・・・。ほら、ここにあるぞ。」
グラディスはガウディの鼻先に、手紙を突きだした。
「あったのか!ああ・・よかった・・・。」
言ってからガウディは『しまった』というように口をぎゅっと閉じた。
「なるほどな・・・。お前も団長にあの封筒を渡してよかったのかどうか、不安だったのか。」
ガウディは、ばつが悪そうにグラディスを上目遣いに見ながら、うなずいた。
「ああ・・・。あの時はそれが一番いいと思ったが・・・落ち着いて考えてみると、なんで団長があんなにあの話に食いついたのかがおかしいと思ったんだ・・・。」
「団長が黒幕だなんて思いたくないが、少し気にかけておいたほうは良さそうだな・・・。」
「あのローディという男が無事がどうかも確かめないとな・・・。」
「そうだな・・・。団長や副団長が悪だくみに加担するとは思いたくないが・・・。」
「しかし、あのローディという男を刺した犯人の正体はいまだわからないわけだしな。」
つまりそれは、犯人が、もしくは犯人の一味の中に団長と副団長が入っている確率が、半分はあるのだということだ。
「確かにあの男が刺されていた場所と、詰所の距離はそんなにないが・・・。」
人混みの中で彼を刺し、すぐにその場を離れる。ダガーを差し込んだままにしたのは、返り血を浴びないよう、そしてその後何食わぬ顔で表を歩けるようにではないのか。詰所に入り、誰かが、いや、もしかしたらローディをグラディス達が見つけることを見込んで、やってくるのを待つ・・・。
「団長か副団長なら、詰所に出入りしても別におかしくはないからな。まあ・・・町の中に団長が現れれば王国剣士の誰もが緊張はするだろうけどなあ・・・。」
「しかし・・・副団長だって、さっきがあの男と初対面だったようじゃないか。となると、団長だけでなく、服団長もその『マント野郎』と同じ人物でないってことになるぞ。」
あのローディという男は、今日自分を刺したのは間違いなくその『マント野郎』だろうと言った。住宅地区の建設現場で周旋屋達と話していた、黒ずくめの男だと言う。話を聞けば確かにそれでつじつまが合うが、果たして本当にそれが同一人物なのかはまだわからない。ローディは『声』を聞けばわかると言った。つまり人相風体は彼も知らないのだ。
「それはそうだが・・・あの男を刺した奴が単独犯なのかどうかもわかるまい。13番どおりの路地裏で聞いた『E』の声ってのはそこそこ年寄りだったと言う話だし、そいつがどこぞの貴族様だったりすると、動かせる手駒はそれなりに数がありそうだぞ?」
「明日はパーシバルさんと話が出来るだろう。その時にでも相談してみるか。」
「パーシバルさんが味方でいてくれるならな。」
「おいおいやめてくれよ。それじゃ誰も信用できないじゃないか。」
「まったくだ・・・。パーシバルさんと・・・ヒューイさんも当てに出来ればなあ。」
「それは仕方ないじゃないか。団長がこの件に関わっているかは別にして、言うなと言われたんだからな。」
「それが・・・ヒューイさんが動けばあっという間に自分達の正体がばれてしまうから・・・だったりしてな・・・。」
一瞬2人とも黙り込んだ。パーシバルの力量を見る、それは団長達の本心なのか、それとも・・・。
グラディスとガウディが部屋でため息をついていた頃、剣士団長室から出てきて大きなため息をついている男がいた。パーシバルである。
「・・・・・・・。」
『お前を私のあとの剣士団長にという話は聞いているな?』
剣士団長室に一人で来てくれと呼び出され、入って扉を閉めた途端の剣士団長の言葉に、パーシバルは心臓が飛び出るかと思うほど驚いた。返事のしようがなく、口をパクパクさせるパーシバルを、ドレイファスはおかしそうに見ている。
『そんなに焦るなよ。ケルナーあたりから、話は行っていると思ったんだがな。まあ、今行ってなくてもそのうち行くだろう。そこで、お前の力を試したい。』
『私の・・・力を・・・ですか。』
『そうだ。お前とヒューイのコンビは今では若手ナンバーワンと称されるほどだ。それは私もわかっている。では、お前一人ではどうだ?』
痛いところを突かれたと、パーシバルは思った。自分達が『若手ナンバーワン』などと言われるに至ったのは、全てヒューイのおかげだ。先輩達にはあまり受けがよくないが、それはヒューイが頑固者で、自分が納得できないことは誰がなんと言おうと首を縦に振らないのに、問題解決能力はずば抜けているからだ。そして彼は上下関係をあまり重んじない。故に礼儀知らずだと思われてることもしばしばだ。だが剣士団長として必要な資質は、礼儀正しさや先輩への気遣いなんかじゃない。そう考えれば、ヒューイこそが剣士団長にふさわしいと、今でもパーシバルは思っている。もしも本当にそうだったなら・・・今回剣士団長にという話が出たのがヒューイだったなら、パーシバルは手放しで喜んだだろうに・・・。
(今さら言っても仕方ないか・・・。)
力があろうとなかろうと、剣士団長の座に座らなければならないのは自分なのだ。他の誰でもなく。ふと思い立ち、パーシバルは今夜のうちにグラディスとガウディと話をしておこうと考えた。彼らが巻き込まれているらしい今回の騒動を、彼らの手助けをしながら『お前の考えで解決してみろ』というのが、剣士団長からの指示だ。今一度部屋に戻ってから出てくるとなると、ヒューイに不審がられるだろう。彼に嘘をつくのはつらい。だが今回だけは・・・そうしなければならないのだ。
「ガウディ、グラディス、いるか?」
部屋の扉を叩く音と声で、ガウディとグラディスはどきりとした。
「パーシバルさんの声だよな。」
「ああ。開いてますよ、どうぞ。」
答えて部屋の扉を開けたのはパーシバルだ。
「夜遅くすまんが、今ちょっといいか?」
「・・・はい。あの・・・団長から何か聞いてここに来たんですよね?」
グラディスは恐る恐る聞いた。
「ああ、お前達の手助けをしてやってくれと頼まれてな・・・。」
パーシバルの顔色は冴えない。おそらく『ヒューイには黙っていろ』と言われてきたのだろう。
「団長から大体の話は聞いた。お前らに協力して調べてみてくれと言われたんだが、俺としては、もう一度お前らから話を聞きたかったんだ。グラディス、俺にも話を聞かせてくれ。そしてその上で、2人の考えを知りたい。」
「え・・・俺もですか・・・。」
ガウディが尋ねた。
「もちろんだ。お前らは2人で動くんだろう?お互い考えを出し合いながら解決に持っていくのが普通じゃないのか?」
『頼まれたのはこいつですから』と、言わなくてよかったと、ガウディは思った。そんなことを言ったらパーシバルは怒るだろう。それに、どんなに気に入らなくても今自分はグラディスとコンビを組んでいるのだ。相方の仕事を手伝うのがいやだなんて、言い訳にすらならない。
「わかりました・・・。」
口ではそう言ったが、ガウディが納得していないのはパーシバルの目にもすぐにわかった。パーシバルとヒューイは、この2人がもう少しうまく行くようにならないものかと昼間いろいろ話し合っていた。仕方ない、剣士団長の『指示』は、この2人の仲直りだとでも言っておくか・・・。そしてそう言ったからには何としてもこの2人をもう少し『仲良く』させなければならない。今回の問題を解決する事が、そのきっかけになってくれるといいんだが・・・。
「それじゃグラディス、話してくれ。」
グラディスとしてはガウディと一緒にこの問題を解決するつもりでいた。どんなに気に入らなくても相方は相方だ。無視するわけにはいかない。しかし、今のガウディのあまりにも消極的な返事に腹を立てていた。
(まったく・・・こっちは協力して行こうと思ってるのに、何なんだこの態度は!?)
「グラディス、どうだ?」
「あ、は、はい・・・。」
とりあえずこの怒りは納めておくしかない。パーシバルが部屋に戻るのが遅くなると、ヒューイが不審に思うはずだ。
「あれは・・・5日ほど前の話なんですが・・・。」
グラディスは、最初にローディと出会った時のことを、必死で思い出しながら話した。その後彼が酒瓶と金、黒い封筒の入った包みを案内係のミアに預けに来たという話から、その中に書かれていた手紙の場所に向かったこと。そこで刺されたローディに出くわしたのだと。
「これが、起きたことの全部です。おいガウディ、あのおっさんに会いに行った時からはお前も一緒だったんだ。俺の説明で何か抜けているところはあったか?」
「いや、それで全部だと思う。」
ガウディはそう言ったが、実はさっきグラディスの懐から出てきた手紙の話は、いつするつもりなのか気になっていた。でもそれをパーシバルに言ってしまっていいのか、ガウディにも判断はつかなかったのだ。
(つい手紙の話を抜いちまったが・・・どうするかな・・・。)
グラディスはグラディスで、その話をすべきかどうか迷っていた。あの手紙の中には今回の出来事の顛末のほかにローディの名前、住所も書かれていた。もしかしたら、自分たちに会えなかったら王宮に出向くつもりで、あの手紙を用意したのかもしれない。
「なるほど・・・。で、お前達としてはどうだ。」
「あの・・・パーシバルさん。」
「なんだ?」
「その話をする前になんですけど、俺があのおっさんから預かった黒い封筒ってのは・・・パーシバルさんは、その・・・見たんですか?」
「ああ、団長から見せていただいた。あと、その『盗んだ』という酒瓶もな。そういえばその酒代らしい金まで団長に預けたんだな。これを預けられても困るんだがなって、笑ってたぞ。」
「そうですね・・・。まあ、この話が解決したら、改めてもらいに行きます。」
どうやら団長の手元には、まだあの封筒も酒瓶もあるらしい。
「どうも妙だな・・・。お前達、何か隠してるんじゃないのか?」
パーシバルの問いに、ガウディとグラディスは揃って顔をこわばらせた。さっきから2人は妙にもじもじしている。これがヒューイなら『俺を口説く気か』とか、『便所なら行って来い』くらいの冗談を言うところだろうが、パーシバルはそこまで柔らかくなれずにいる。
「俺はお前達に協力するが、それにはお前達も俺に協力してくれるということが大前提だ。それが出来ないなら、俺もこの話から手を引くしかないぞ。」
団長は信じたい。だがその本心はわからない。それは副団長についても同様だ。ではパーシバルは・・・
(これは賭けだな・・・。外せば終わりだが・・・。)
グラディスは肚を括った。
「パーシバルさん、すみませんでした。全部話しますから聞いてください。」
隣でガウディは、グラディスを包む『気』がぴんと張りつめるのを感じていた。グラディスはどうやら、パーシバルを信じることにしたらしい。そして、グラディスは『自分の考え』をパーシバルに話した。周旋屋達が共謀して手数料を吊り上げているのではないか、そしてそれに異を唱えたかもしれない周旋屋のまとめ役ガルガスを、死に追いやったのではないか・・・。
「・・・それと、その・・・あのおっさんが刺された時の、団長と副団長の、妙な食いつきのよさがどうにも・・・気になって・・・。」
「・・・つまりお前は、団長と副団長がその件に一枚かんでいると疑っているわけか・・・。」
グラディスが黙ったままうなずいた。なるほどそれならさっきの二人の態度もわかる。団長を疑うなんてとんでもないと思う一方で、どうしても疑念が消せない・・・。この2人もそれで悩んだのだろう・・・。
(そんなことはないだろうが・・・先入観を持って仕事にあたるべきではない・・・。いやしかし・・・)
『お前だけの力を見たい』
団長にそう言われ、ヒューイにこの件を隠すことには同意したが、それがもしも・・・ヒューイのあの行動力で自分達の罪を暴き立てられるのが怖いからだとしたら・・・。
「確かに、まずは全ての事柄について疑ってかかるというその考えは、理解できる。だが人間というものは、一つ疑いが芽生えると、何でもかんでもそれに結び付けて考えようとしてしまうんだ。今回のようにまだ全体像すら掴めていないような話ではなおさらだ。出来る限り客観的に考えるようにしてくれよ。さて、次はガウディだ。」
ガウディは、この話を聞かされたのは実際にグラディスがローディと出会ってから数日後だったことをまず話した。自分がローディと会ったのも今日が初めてで、たいしたことはわからないのだと。その上で、グラディスから聞いた話と、ローディから聞いた話を考え合わせると、やはり周旋屋ガルガスの死には何か秘密があるのではないか。そして・・・自分も団長達があんな雲を掴むような話になぜあれほど親身になってくれたのかが引っかかると言った。
「ふむ・・・なるほどな・・・。グラディス、そのローディという男の言う『黒マントの男』だが、お前はその酒場の前で話をしている時に近くにいたとは気づかなかったんだな?」
「はい、全然・・・。」
「なるほど・・・。そのローディの話だけなら、そんな男はいなくて全てローディの狂言という説も浮上するんだが・・・。彼は実際に刺され、危うく死ぬところだった・・・。グラディス、この話が自分を被害者と見せかけるための自作自演だった場合、彼は自分でダガーを刺したことになる。その傷は、自分でもつけられそうな場所だったのか?」
「自分では無理だと思います。」
この時のグラディスの返事は早かった。
「軽業師みたいに体が柔らかいとしても、背中のあの場所にあの角度でダガーを刺すことは、自分では出来ないと思います。」
グラディスはそう言って立ち上がり、『ここから、こうこっちに』と、ローディが刺された傷の場所や角度を説明した。
「そうか・・・。確かにそこではどう頑張っても自分では無理だな。しかも団長の話では『おそらくは何のためらいもなく一気に刺しこんだのだろう』ということだった。となると、そのローディの話に真実味が出てくる。そしてその『黒マントの男』の存在も、ただの空想とは考えられなくなってくるわけだ・・・。」
その男が実在するとすれば、グラディスがローディと初めて会ったその日、2人とバーテンとのやりとりを、その男はどこかから見ていたはずだ。もちろん、グラディスが気配に気づけなかったとしても彼を責めることは出来ない。彼は目の前の事態の収拾に全力を尽くしていたのだ。
(・・・おそらくは気配を消すことに長けている人物・・・なんだろうな・・・。その男はグラディスの顔もあのローディという男の顔も、知っているということか・・・。)
にも関わらずローディが刺されたのは今日だった。おそらくその『マント野郎』は彼の家までは知らないのだ。いや、知らなかったと言うべきかも知れない。今日、グラディス達がローディを助けて詰所に運びこんだことは、おそらく知っているだろう。それを考えれば、ローディが帰る時も、もしかしたらあとをつけられていたかもしれない。副団長が付き添っていったのは正解だったが、それこそが団長と副団長の自作自演だとしたら・・・。
「うーん・・・俺も今日初めて聞いた話だから、もう少しいろいろ考えてみるよ。後でまた声をかけるから、それまでにお前達も少し聞き込みをしておいてくれ。あ、それから、今回の件はお前らの仲をもう少しよくしろと団長から指示されたってことにしておくよ。もしもヒューイに何か聞かれたら、それで話を合わせておいてくれないか。」
そう言って、パーシバルは部屋を出て行った。
「確かに・・・あのおっさんが言ってた話は、詰所にいた全員が初耳の話だ。あのおっさんの狂言ということも考えられるんだよな・・・。」
グラディスがあまり素直に言ったので、ガウディはまた苛立った。以前自分も同じことを言ったのに、その時は全然話を聞こうとしなかったのだ。
「・・・そりゃそうだろう。その黒マントの男が実在するのかもわからないわけだぞ。」
そうれ見ろ、とでも言いたいところだが、ここはグッとこらえて、ガウディは言った。
「実在しなかったら誰があのおっさんを刺したんだよ。」
グラディスもむっとした。何でこいつはこう俺を馬鹿にするような言い方ばかりするんだ・・・。
「それを突き止めるんだ。パーシバルさんにちゃんとした答えを返せるようにな。」
「・・・それじゃ明日も城下町市場周辺だな。」
「ああ、だがいつまでも同じところばかり歩いているわけにも行かないからな。明日と明後日くらいで何とか情報を集めないと・・・。」
「そうだな・・・。」
「ただいま。」
パーシバルはやっと部屋に戻って一息ついた。ヒューイは風呂上りらしく、タオルを首に巻いたままベッドに寝転がって本を読んでいた。
「おそかったな。団長の話ってのはなんだったんだ?」
パーシバルはヒューイの顔を見て、大きくため息をつくと鎧も外さないままベッドにごろんと寝転がった。
「団長室に入るなり、『お前を私のあとの剣士団長にという話は聞いているな?』と言われたよ。」
「うへ、団長も率直だなあ。それじゃお前はなんと答えていいか分からなかったんじゃないか?」
「・・・ははは・・・まるで見ていたみたいだな。その通りだよ。頭の中が真っ白になった。」
「見ていたわけじゃないが、わかるさ。お前の性格からして、そういう時にうまく切り返すなんてなかなか出来ないだろうと思ったのさ。」
(こいつは俺のことをよくわかってくれてるんだよな・・・。)
こいつにはかなわない、パーシバルは改めて思った。でも今回のことは自分で何とかしなければならないんだ・・・。
「しかしそんな話をするためにわざわざお前を呼んだのか?」
「いや・・・課題を出された・・・。」
「・・・課題?なんだそりゃ。」
「俺の『団長としての資質』を見るために、グラディスとガウディがうまく行くよう考えろとさ。」
「・・・・・・・・。」
ヒューイは一瞬ぽかんとしたが、『へぇ、なるほどね』とうなずいた。
「ま、あいつらの仲の悪さは団長の耳にも届いていたらしいからな。なるほど剣士団長たる者、部下の教育も仕事のうちというわけか。」
「・・・教育なんて偉そうなもんじゃないが、確かにほっておけないからな。ただ、この課題には一つ条件があるんだ。」
「条件?」
「ああ・・・お前に頼らず、俺ひとりでなんとかしろとさ。」
「・・・ということは、俺達で相談するんじゃなくて、お前が一人でやつらの仲を取りもつってのか?」
「ま、そういうことになるな・・・。」
「うーん・・・つまり俺はお前がどんなに困っていたとしても、その件について助言も出来ないってことか・・・。」
「そうだな・・・。」
「うーん・・・。」
ヒューイは起き上がってベッドの上に座り、しばらく考え込んでいたが・・・
「それがお前に出された課題なら、しょうがないな。黙って見てるってのもなかなか大変なんだが、今回ばかりは我慢するか。それじゃパーシバル、お前はしばらくそっち優先で動けよ。そのほかのことは俺が何とか頑張るよ。そこまでは団長も何も言ってなかったよな。」
「それはそうだが・・・。それじゃお前にばかり負担がかかるじゃないか。」
「お前があの2人を仲良くさせるのに手間取れば、負担がかかるだろうな。」
ヒューイがにやりと笑った。
「・・・ははは・・・そうならないよう俺が頑張れってことか。わかったよ。出来るだけお前の負担が大きくならないようにするよ。」
「よし、決まりだな。それじゃ風呂に行って来いよ。随分疲れた顔をしているぞ。風呂で疲れを取って、明日に備えようぜ。」
「そうだな・・・。行ってくるか。」
パーシバルは着替えを詰めた袋を持って、部屋を出た。その後ろ姿を見送ってヒューイが首をかしげた。
「しかし妙な話ではあるな・・・。わざわざ俺が首を突っ込めないようにして、団長は何を考えているんだ・・・?」
ヒューイはしばらく考え込んでいたが、やがてため息をついてベッドに潜り込んだ。
「お偉いさんの考えていることなんぞ、わかるはずないな・・・。」
誰かの考えていることが手に取るようにわかるなら、ジーナと喧嘩なんてしなくて済んだのに・・・。
「・・・・・・・。」
ジーナの泣き顔が浮かんだ。別れ際にあんな泣き顔はみたくない。次の非番の日は・・・必ず笑顔で・・・。
風呂へと続く廊下を歩きながら、パーシバルの良心が痛んでいた。ヒューイに嘘をつくのはつらい。こんなことは早く終わらせなければならない。
「明日・・・あいつ等がどれだけ情報を仕入れてこれるか、だな・・・。」
そして自分ももう一度考えなければならない。あの周旋屋の死を扱ったのはアルスとセラードというベテランの先輩剣士だ。ガルガスとはパーシバル達も顔見知りだったので、調書を見たあと2人に話を聞きに行ったのだ。
『慎重なおやっさんだったんだがなあ・・・。酒好きなのは確かだが、酔って足を滑らせるほど飲むなんて、何があったんだろう・・・。』
アルスとセラードは入団したころからガルガスに世話になっていたという。亡くなる少し前から元気がなく、二人はかなりガルガスを気遣っていたのだが、体調が悪いとしか言わなかったそうだ。
昔から城下町に事務所を構える周旋屋はいくつかあるが、住宅地区建設の工事が発表されてから、ローランやクロンファンラ、果ては南大陸の村からも周旋屋達がやってきて城下町に事務所を開いた。当然元からいた周旋屋達との間に縄張り争いのようなものが起きたのだが、それを収めて組合を作ろうと言いだしたのがガルガスだと聞いている。争って共倒れになるより、手を組んで利益を分け合ったほうがいいのではないかというわけだ。反対する者はもちろんいたが、欲をかいて仕事を失うような事になったのでは意味がない。そこで周旋屋達は手を組み、組合が結成された。ガルガスは”言いだしっぺ”としてその組合の代表となった。頑固者で自分が納得しない限り絶対に首を縦に振らない。周旋屋達が人夫の斡旋で得る手数料を決めたのもガルガスらしい。
「その手数料がじわじわ上がっていると言う話も・・・最近聞いたが・・・。」
もしかしたらそういうことも、ガルガスが元気をなくす要因になっているのかもしれないが、ガルガスは組合長だ。手数料の引き上げについては決定権があるのではないか、パーシバルがそう考え口に出すより早く、ヒューイが言った。
『俺達もガルガスさんは知ってますけど、特に遠慮するような性格の人じゃないですよね。手数料の引き上げが不満なら、下げるようにするとか、一人で決めるのがまずいならみんなを集めて話し合いをすれば済んだんじゃないですか?』
『おいおい、そう怒るなよ。俺達だってそれは考えたさ。だがそれはガルガスさんがそう言ったわけじゃない。元気をなくす要因としてそのくらいしか思いつかないってことだ。いくら親しいとは言っても、そんなに何でも話せるわけじゃなかっただろうしな。』
『あ、そうですよね、すみません・・・。でも・・・悩んでいたみたいなのに結局こんなことになって、悔しいじゃないですか。俺達はアルスさんたちほどガルガスさんと親しかったわけじゃないけど、こんな死に方するなんて・・・。』
ヒューイは悔しそうだった。その悔しさはパーシバルも感じていた。事件であれ事故であれ、そんな形で寿命を縮める人たちなんて、一人も出したくないというのに・・・。
『そうだな・・・。』
アルス達の話ぶりから察するに、彼らは自分たちで得た情報に納得していないらしかった。ガルガスの死には何か事件性があるのではないか、彼の『悩み』がその死に関わっているのではないか、それは単に個人的な悩みではなく、仕事に絡んでいるのではないか、二人はおそらくそう考えている。
「しかし・・・俺達が調べますとは言えないもんなあ・・・。今でさえいろんな案件を抱えているってのに・・・。」
ヒューイは納得いかなそうな顔をしていた。だが彼も今自分たちが動けないことは重々承知している。結局この話はそこで終わりになったと思っていた。だが・・・。
「もしもそのローディーという人が刺されたことと、ガルガスさんの死に繋がりがあるとしたら・・・。」
ガルガスの『悩み』が周旋屋の手数料引き上げに絡んでいるのではないかというアルス達の考えが、信憑性を帯びてくる。そしてガルガスの死自体が事故ではなく何者かによる殺害である可能性も・・・。
「とは言っても、そんなことをうっかりアルスさん達に言えないし・・・。」
話を聞いた時ならともかく、今になってやっぱり調べなおしましょうかとは言えない。下手をすれば彼らのメンツをつぶすことになってしまう。それでも明らかに不審な点があるとでもいうなら話は違ってくるのだが、今のところはまだまだ雲をつかむような話でしかない。
「やっぱり地道に市場あたりで聞き込みをするしかないかな・・・。」
ガウディとグラディスが言っていたように、市場は人で溢れているがそのわりに店は儲かっていないらしい。それはパーシバル達も警備中に何度か聞いた。スリやかっぱらいに遭った店主達が口を揃えて言うのだ。
『泥棒は許せないが・・・気の毒なのも確かなんですよねぇ・・・。』
「そういえば・・・ガウディが捕まえたという男・・・たしかエイベックと言ったな・・・。その男が市場に出てきて盗みを働く前に、どこから来たんだろう・・・。もしかしたら13番通りの入口あたりを通ったんじゃないか・・・?」
エイベックは人夫募集をしている広場で仕事にあぶれ、市場へ来てふらふらと店先のものを取って逃げようとしたと言う話だ。人夫募集の広場から市場に来るには・・・。
「もしも何か見ているとしても、話してはくれないか・・・。あんたが盗みで捕まった時に、なんて聞けないしなあ・・・。」
その男は今やっと定職と言えそうな職に就けたらしい。小さな子供を男手一つで育てるために、これから頑張ろうと心に誓っているのではないか。盗みで捕まったときのことなんて、思い出したくもないに違いない・・・。
「はぁ・・・こう言うところが俺はだめなんだろうな。ヒューイの奴なら迷わず聞きに行くだろう。だがあいつはその相手に対する気遣いも忘れない奴だ。うーん・・・。」
パーシバルは考えながら風呂から上がり、部屋へと戻った。ヒューイはもう寝たらしい。布団をかぶっている。
「まあいいか・・・。明日考えよう。」
明日自分で調べてみて、ガルガスの死とローディの一件が繋がっていると、ある程度確信できそうなら、もう一度アルス達と話をしてみようか。さすがにもう眠くなってきた。ベッドに潜り込むと、すぐに眠気が襲ってくる。
「明日だ・・・。とにかく・・・明日・・・。」
呪文のように何度も繰り返し、パーシバルは眠りに落ちた。
「はぁ・・・。」
ため息。
「はぁ〜〜・・・・・・。」
またため息。
家に帰り着いてから、何度目のため息だろうか。
「ちょっと、いつまでそうしているつもり?」
女房にうるさがられても、ため息は勝手に出ていく。ローディはすっかり気が抜けて、何もする気になれないでいた。
「そんな言い方するなよ・・・。俺は殺されるところだったんだぞ・・・。」
昼間のことを思い出すと今でも冷や汗が出る。あの若い王国剣士達が来てくれなかったら、刺されたままいずれは倒れていただろう。そして人混みの中で踏まれ潰され、見るも無惨な死体となって家に帰ってくる羽目になっていたかも知れないのだ。
「・・・それは聞いたわよ。剣士団の副団長さんに護衛されてくるなんて、うちの亭主はいつの間に重要人物になったのかと思ったわ。でも・・・元を辿ればあんたが悪いんじゃないの。酔っ払ってふらふらして、聞かなくてもいい話を聞いてしまうなんて、ほんっっっと、ばかだわ!」
ローディは剣士団副団長のデリルに護衛されて家まで戻り、今までのことを女房に話した。そして念を押されたばかりなのだ。
『出来るだけ外へは出ないでください。もちろんあなた方をお守りするよう団長から言いつかっている者が常におりますが、特に、お子さんは何があっても1人で遊ばせたりしないように。なに、すぐにご主人を襲った不届き者は捕らえてみせますから、長いことかかるわけではありません。少しの間ですが、辛抱してくださいね。』
女房の言うことは全くの正論だ。何一つ文句を言うことが出来ない。確かに自分が悪いのだ。あの時へたな好奇心など起こさず、家に帰ることを選んでいたら・・・。
「しょうがねぇじゃねぇか・・・。もう起きちまったんだ。お前には悪いと思ってるよ。」
「・・・はぁ・・・ため息をつきたいのはこっちよ。仕方ないわ。しばらくは家でおとなしくしているしかなさそうね。」
「そうだな・・・。」
ローディは上の空で返事をした。実は彼がため息をついているのにはもうひとつの理由がある。ローディは今朝家を出る時、もしも王国剣士と会えなかった場合を考えて、手紙を準備していた。中には今回の出来事の顛末を詳細に書いてある。無論、ローディの名前も、住んでいる場所も。その手紙を、今朝は確かに手に握り締めて出かけたはずだ。だが・・・
(目が覚めたときはどこにもなかった・・・。あの手紙が王国剣士達の手に渡っていたなら、さっき何かしらその話が出てもいいはずなんだが・・・。)
それが出なかったと言うことは、考えたくはないがその手紙は自分を刺した『マント野郎』が持ち去ったのだろうか・・・。
(だとすると、俺と家族の命はやっぱり風前の灯か・・・。)
剣士団の副団長は、自分たちを守るために『団長から言いつかっている者』がいるといった。
(そいつに期待するしかないのか・・・。ちくしょう!なんだってこんなことに・・・。)
頭を抱えてため息ばかりついている亭主を、女房は呆れたように見つめている。
(ため息をつきたいのはこっちのほうだわよ・・・まったく・・・。)
亭主の好奇心の強さは折り紙付きだ。そのせいで厄介ごとに巻き込まれたのはこれが初めてではない。だが殺されるところだったのはさすがに初めてだ。それほど出来た亭主というわけではなくとも、好き合って一緒になった仲だし、2人の間にはかわいい子供もいる。
(あと1人くらい子供は欲しいし、一緒に長生きしたいもんねぇ・・・。あたしが頑張らなきゃ!)
女房は女房で肚を括っていた。こう言う時は女のほうが度胸がある。
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