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そして妻はその疑問をリーザに尋ねたらしい。
「リーザは今になればそれが理解出来るって言ってたわ。子供の頃は期待されるのが嬉しかったけど、お母さんが友達まで管理しようとしているのを知った時から息苦しくなったって言ってたわよね。でもその頃にはもう自分を表に出せなくなってしまった。お母さんの望む「聞き分けのいい子」をつい演じてしまっていたって・・・。」
そう、それも『今になれば』理解出来るが、ハディとのことで悩んでいた時にはそこまで気づくことは出来なかった。
「それでね・・・リーザは多分1人で考えて、一番悪い結論にたどり着いたんだと思う。ハディとこれからも一緒にいたいって言う望みを捨てれば万事解決するって、だから別れるのが一番いいって思い込んで、それをそのまま口にしたって言ってた・・・。」
口に出した瞬間から後悔していたという。それでも『これが最善』と思い込んで・・・いや、思い込もうとしていたリーザには、それを撤回するという考えはなかったそうだ。
「だから、そのあとフロリア様の護衛に志願してから、まさかまたハディと組んで南大陸まわりをすることになるなんて思ってもみなかったみたい。志願すればすぐに採用されると思い込んでいたらしいわ。」
「それもまた、リーザが冷静でなかったって事なんだろうな・・・。あの当時、リーザの実力は確かに目を見張るほどになっていたけど、前の護衛がユノだったことを考えれば、そう簡単に採用されるなんて考えるのは、目論見が甘すぎるよ。」
「そうよね・・・。自分でもそう言ってたわ。志願すればすぐに聞いてもらえるなんて、何でそんなことを考えていたのか自分でもわからないって言ってた。ガウディさんが厳しいのは、グラディスさんから聞いていただけでもわかってたはずなのにねって。」
ハディの訓練担当官なら、例えば複数で交代しながら任に就くということが出来るが、フロリア様の護衛はそうはいかない。あの当時のフロリア様に、何人もの護衛を交代で付けるなんてことは、おそらくレイナック殿が承知しなかっただろう。
(フロリア様の異変の原因が、自分やケルナー卿にあると知ってしまったんだから、おそらく負い目も手伝って、フロリア様に出来る限り負担をかけないように考えていただろうな・・・。)
リーザの申し出は、レイナック殿には好意的に受け入れられたらしいが、何と言っても国王陛下の護衛だ。生半可な者をつけるわけには行かないと、ガウディさんが待ったをかけたんじゃないだろうか。そして経験不足を補うために南大陸まわりを指示した・・・。
そのあと妻が話してくれたことは、ハディから聞いていた話とほぼ一緒だった。南大陸への赴任が未経験の剣士達に混じって、ハディとリーザも何年か南大陸を廻る仕事に就いていたこと、以前と同じようにコンビで動くことに、どちらもぎこちなさを感じていたが、少しずつ勘を取り戻していったこと、その後何年か過ぎて、実力が十分とガウディさんが認めたことで、それぞれが希望していた訓練担当官、フロリア様の護衛に転属し、それ以降は食堂で顔を合わせるくらいになっていったこと・・・。
だから2人の記憶は一致している。リーザの記憶に曖昧な点が少し感じられるが、そこまで大変なことではないと思う。
「・・・それでまあ・・・その後は平穏だったらしいわよ。リーザは乙夜の塔に寝泊まりしていたから、食事の時以外でハディと顔を合わせることもなかったから、たまに顔を合わせた時に話すくらいで、2人が以前恋人同士だったなんて知ってる人は自分達と同期かそれより上の人ばかりだったと思うって。」
「リーザはそのあとずっとハディのことを忘れてなかったのかな。」
「そうみたいね。ただなんて言うのかな・・・恋をして相手とお付き合いしたいとか、結婚したいとかっていう情熱的な感情ではなくて、何となく心の奥に面影が留まっている、みたいな感じだって、そんなことを言ってたわよ。」
「そうか・・・。ハディも似たような事を言ってたな・・・。別れてしまえば他の女性に心が動くかも知れないと思ったけど、そういうことにはならなかったって。」
「2人とも、お互いを思い合っていたのに、ずいぶんと遠回りしちゃってたみたいね・・・。」
2人とも、お互いと共に歩む未来を一度は諦めてしまったせいだろう。それでもそれぞれが選んだ道で手応えを感じていた、そのおかげで今まで平穏無事に過ごせたんだろうと思う。
「2人ともその状態を受け入れていたんだろうけど、受け入れていなかったのは、周りの人達みたいだね。」
「その話も聞いたわ。この話を持ち出したのは、フロリア様だそうよ。」
やっぱりそうか・・・。2人のことを心配しているのは、オシニスさんだってレイナック殿だって同じだと思うが、この20年、一番心を痛めていたのはフロリア様だっただろう。セルーネさんについても、未だに気に病んでいるという話だ。
「フロリア様がリーザにね、その日はクロービスと2人で話がしたいから、あなたもお茶会が終わるまで席を外してほしい、よければどこかに泊まってきてもいいと言ったんですって。リーザは突然そんなことを言われて驚いたそうだけど、20年前のことでフロリア様とあなたの間に何か因縁があるような気がしていたから、その時は実家に戻ろうかどうしようかと思ったらしいんだけど・・・。」
そこにレイナック殿から、これを機会にハディと一度話をしてみてはどうかと言われたらしい。
『余計なお節介と言われれば返す言葉もないがな、お前もハディも、もう充分に剣士団に、そしてこの国に貢献してくれた。今後も期待はしておるが、そろそろ自分の幸せも考えていいのではないか?』
だがリーザとしては、ハディに今回の件を話していいものかどうか判断出来ない。そう言ったところ、オシニスさんがハディに話をしてくれるはずだと言われた。
『フロリア様は今でもお前達のことを気に病んでおられる。これを機会にお前達がまた以前のように、と言うことになればそれは何よりだが、人の心の問題だからな。お前達がもうお互い吹っ切れているというなら、それはそれでよい。2人で話し合って、お前達の今後について、フロリア様がこの先気に病まれることのないよう、報告して差し上げてくれぬか。』
レイナック殿の後押しもあって、リーザはハディと話をしようと決意した。オシニスさんがハディに話を伝えてくれたと言うことだったので、その日の夜、待ち合わせをしたいとハディに伝えてくれるよう、オシニスさんに伝えたという。
「リーザがその日外に出ても不審に思われないよう、私達が訪ねていったから、リーザが久しぶりに昔なじみと会うためにフロリア様に少し席を外したいと願い出たことにしたんですって。ハディには話が通っていたらしいけど、リーザがハディと会うなんて話を誰かが聞いたら、疑問に思われるだろうからって。実際私はリーザと会って話をしていたわけだしね。だからあの時ハディが現れてリーザに声をかけたのも、予め話が決まっていたってことよね。すっかり騙されたわ。」
妻が笑い出した。
「リーザとハディは待ち合わせをしていたらしいよ。でもただ待っているのも何となく落ち着かなくて、君とお茶を飲んで話をしてから行くって言うのは聞いてたから、迎えに行ったんだってさ。」
「迎えに来られるとは思ってなかったから、照れくさかったらしいわよ。」
「ははは、ハディも同じだったみたいだけどね。そして2人はハディの家で話し合い、本来ならばその翌日ごく普通に別れるはずだったということか・・・。」
「あの時ね、最初はせっかくハディが気を使ってくれるんだからって、食事をして、話し合いをして、改めて自分達のことも考えてみようかって、そこまでの話で終わるはずだったって言ってたわ。でも・・・。」
風呂から上がってあとはもう寝るだけという時、このままここで別れてしまっていいのかと、リーザは思ったらしい。
「ハディが気を使ってくれたのはすごくわかるから、彼の気遣いを無駄にしたくないと思う一方で、やっぱり自分はハディが好きなんだと改めて自覚してしまって、どうしても今日のうちに気持ちを伝えなくちゃって思ったらしいわ。」
2人はその日の夜、改めて結ばれ、お互い今後のことをきちんと考え、今度こそ結婚しようと約束した。幸せな夜が明けて翌日、ハディの家を出る時になってなぜか、罪悪感が襲ってきた。ハディと寄り添っている自分がとても悪いことをしているような気がして、でも自分はハディが好きなのだから、そして彼が受け入れてくれたのだからと思っても、どうしてかここにいてはいけないような気持ちになった。帰り際にハディの手が肩に触れた時、思わずそれを避けようとした自分に不安を感じながら、それでも彼の腕に抱きしめられて少しは安心出来た・・・。
「それもまた、お母さんの影響なんだろうな・・・。」
心の奥に本人も気づかない状態で居座っている母親の影が、リーザの心を縛っていたのだと思う。
「それも、今になれば「ああそうか」って思い当たったらしいわよ。自覚出来ているってのは、悪いことじゃないわよね。」
「それはいい傾向だよ。ただあまり気にしすぎてもよくないからね。」
「あとは少しずつお母さんの影響から抜け出られるよう、まわりがサポートしてあげればいいってことでいいのかな。」
妻が言いながら首を傾げた。これでいいのかどうか、判断がつかないらしい。
「大丈夫だと思うよ。あとは明日オシニスさんがリーザの処分について話をしに来るから、あんまり動揺しないといいと思うけど。」
「でもそんなにひどい処分にはならなそうよね。」
「そうらしいよ。ま、今まで20年もフロリア様を支えてきたのに、たった一度のトラブルで今までのことが差し引きゼロになってしまうような処分にはならないはずだよ。どちらかというと、問題になりそうなのはフロリア様のほうかな。」
「そうねぇ・・・。リーザの処分について、フロリア様はおそらく出来ることなら何事も無しってことにしたいんじゃないかしらね。でもそうはいかない・・・。だから余計に、病室の支払のことでは頑なになっているのかも知れないわね。」
「そう言うことだと思う。そこをエリスティ公派につけ込まれているみたいだよ。リーザがうまく収めてくれるといいんだけどね。」
とは言っても、リーザがフロリア様の御前で挨拶が出来るのは、退院後の話だ。
「先に剣士団と医師会と話を付けて、支払を済ませられればいいのにね。」
「金額によってはそれも可能だと思うから、あとはリーザとラッセル卿の話し合いかな。」
あの部屋の料金は、一日で3,000Gだと言う話だ。それでも抑えてあるらしい。もちろんその額に見合うだけの豪華さはあるのだが、いかんせん稼働率が低いので、医師会の中ではあの部屋の家具調度や寝具をもう少し安いものに替えるか、利用料金を上げるかでしばしば議論が起きるらしい。
「夢のような金額よねぇ・・・。うちの食費の一ヶ月分だって300Gもあれば間に合うってのに・・・。」
「うーん・・・島ではだいたいどこの家でも家庭菜園があるし、庭を掘ればそのまま保存庫に出来るくらい地面の下は氷だらけだし、うちを基準には出来ないと思うよ。」
大抵の食材を長期間保存出来るというのは実にありがたいものだ。そんな便利な地面どころか、庭もない家が多い城下町での暮らしは、島よりずっとお金がかかるだろう。
「それもそうね・・・。」
妻が肩をすくめた。
「一日3,000Gとすると、一週間で21,000G・・・。確かあの部屋は食事が別料金なんだよね。今はセーラが一般病棟と同じ食事をもらってきてくれるから、多分一週間分でもそんなにはかからないだろうけど。洗濯もセーラがやってくれてるから、給金の支払を検討してくれるようにドゥルーガー会長に話しておこうかな・・・。」
本来ならばあの病室には専任の看護婦が何人かつくらしいので、それもまた別料金として利用料金に上乗せされる・・・。
「本人がなんて言うかはともかく、交渉はしておいた方がいいわね。あんなに頑張ってくれるなんて、本当にありがたいわ。」
「明日ドゥルーガー会長に話してみよう。今日はもう寝ようか。明日も早いしね。」
「そうね。明日腹を立てる可能性を考えて、心穏やかなうちにゆっくり寝ておきましょうか。」
「それがいいよ。」
思わず笑ってしまった。
翌日、前の晩の予想通り私達はあの偽調査員が心の中で叫んでいたリーザへの侮辱の言葉を聞かされることになり、予想通り妻が怒ってあの男に一発食らわせてやればよかったと叫ぶのを聞くことになった。
「まったく・・・なんてこと言うのよ!冗談じゃないわよ!」
妻の怒りが収まらないのは仕方ないが、とにかく話を聞こうと宥めて、妻はやっと落ち着いた。
「す、すみません。でもあまりにもひどくて・・・。」
妻は赤くなって何度もオシニスさんに謝った。
「まあしかたないさ。俺だってずいぶんひどいと思ったしなあ。クロービスが言いたくなかったわけがわかったよ。」
「口にしたくもなかったですからね。」
「で、ここから本題だ。昨日捕まえたあの男は、ホルテック卿に雇われたが、ホルテック卿も頼まれてリーザのことを嗅ぎ廻っていたらしい。そいつの名前がわかった。」
「それは教えてもらえるんですか?」
「もちろんだ。お前達は当事者だからな。俺が睨んでいたとおりホルテック卿の後ろについていたのは伯爵家だ。ファルトゥース伯爵家と言って、先々代の国王陛下の弟君が始祖になった、ヴァリアンス公爵家の流れを汲むらしいよ。」
「そんな方がまたどうして・・・。」
「ヴァリアンス公爵家の跡取りの弟が設立したのがデュライーレ侯爵家、まあこの辺りまでは当主はみんなまともだ。だがそこから出たファルトゥース伯爵家の当主はなかなかの野心家でな。貴族達の中で手っ取り早く力を手に入れるために、どこにすり寄るのが一番いいか考えていたらしい。まだまだ新興だから腕のいい密偵を雇うこともなかなか難しく、それでホルテック卿を唆して、今回の件がうまく行けば大臣の中でも御前会議の主導権を握れるように根回ししてやると持ちかけたそうだ。」
「・・・何だかずいぶん詳しくわかりましたね。」
昨日の今日だというのにここまで調べがつくものだろうか。
「昨日あの男を牢獄に連れて行って、尋問をしたあの2人組がホルテック卿の名前を聞き出した。すぐさまホルテック卿を拘束して牢獄に引っ立てて行き、後ろ盾について吐かせたと、こういうことさ。」
「え、あれからそこまで一気に話を進めたんですか。」
「そういうことだ。あの男が捕まったことはすぐにホルテック卿の耳に入っただろうからな。となると次にホルテック卿が考えるのはあの男の口封じだ。だがそれは当然ながら失敗した。今度はこちらが先手を打つべく、ホルテック卿を拘束したのさ。あの男もホルテック卿も、今は仲良く牢獄の中だ。ファルトゥース伯爵家の当主も牢獄に呼ばれたが、まあそいつは厳重注意って事でとくに拘束はされないだろうな。もちろん自分の手を汚さずにホルテック卿を操ってうまいこと情報を手に入れようとしていたんだろうから。その程度で済んだことを感謝してほしいよ。もっともこの先、要注意人物としてマークされ続けるだろうが。」
なんと昨夜のうちにそこまで話を進めてしまうとは・・・。
「ホルテック卿はどうなるんです?」
「大臣としての身分は剥奪、今後取り調べを続けて、裁判になるだろうな。大臣の欠員が出たから、誰を新しく任命するかでフロリア様もじいさんも頭を痛めているよ。」
「それは大変ですね・・・。でもこれで決着と考えて良さそうですね。」
「そうだな。お前達にも迷惑をかけたよ。」
「そんなことはかまいませんよ。それでは私達は医師会に行きます。」
「ああ、よろしく頼む。あとで行くからな。」
「リーザには伝えてあります。覚悟は出来ていると言ってましたよ。」
「そうか・・・。あとクロービス、ウィローもだが、サビーネ看護婦の件で進展があった。ドゥルーガー会長に報告書を持っていくんだが、時間を作れないか?」
「私達はいつでもいいですが、リーザの面会が解禁になってからのほうがいいですね。それまでは病室にいなければなりませんから。」
「そうね。あなただけならいいけどその話なら私も聞きたいし。オシニスさん、リーザの面会を解禁するのが明日ですから、それ以降なら時間を作れます。ドゥルーガー会長とも相談しなければなりませんけど。」
リーザのことを頼まれた限りは病室を空けるわけにはいかない。
「そうか。報告書は今日のうちに持っていくから、その時に会長にも話してみるよ。」
まずはオシニスさんの方からドゥルーガー会長に話を通してもらい、私達が席を外す時は医師と看護婦を配置してもらえるよう、オシニスさんが頼んでくれると言うことになった。面会が解禁になれば、チルダさんとリンガー夫人はリーザの看病を手伝ってくれるだろう。ただ2人ともそれぞれ領地運営の仕事がある。それに一日中部屋にいられても、もしかしたら気詰まりかも知れないし、その辺りは2人の都合とリーザの気持ちを聞いてから決めることにしよう。
リーザの病室に着いて、私達は夜勤の医師と看護婦と、簡単な引継をした。昨夜はぐっすりで、とても気持ちよく眠れたと、本人も言っていたのでひとまず心配することはなさそうだ。
「食事はこれからですので、朝の薬もまだ準備していません。そこからはクロービス先生にお願いしてもいいでしょうか。」
「もちろんです。ありがとうございました。」
「失礼します。」
夜勤の医師と看護婦が部屋を出て少しした頃、ノックと共にセーラの声がした。扉を開けるといい匂いが漂ってきた。
「あら持って来てくれたの?ありがとう。」
セーラが小さなワゴンを押して入ってきた。ワゴンの上には食事とティーポットが置いてある。
「こちらのポットには沸き立てのお湯が入ってます。朝のお薬は煮立たせなくてもいいものだと昨日伺ったので。」
薬についてはハインツ先生が配慮してくれた。
『あの部屋には煮炊き出来る場所がありませんし、朝の薬は煎じなくても熱いお湯につけておけば抽出出来る薬を用意しましたよ。』
私は部屋に用意されているカップに薬の袋を入れて、熱いお湯を注いだ。隣に置かれているテーブルには食事のトレイが載せられ、リーザがベッドから出て食べ始めている。
「はぁ、ベッドの上で体だけ起こして食べるって言うのは落ち着かなかったからうれしいわ。」
リーザの体はもう健康そのものだ。発せられる『気』もかなり強い。ただ・・・
(少しだけど安定しないな・・・。)
よく見ていなければ気づかないくらいの揺らめきだが、まだしばらくは注意深く観察する必要がありそうだ。
食事が終わる頃にはちょうどいい具合に薬が抽出されている。朝の薬はそんなに苦くないので、リーザは一気に飲み干した。
「ふぅ・・・思ったより苦くないのね。一気に飲んでしまってから言うのもなんだけど、もう少しゆっくり飲めばよかった?」
「大丈夫だよ。やけどの心配があるくらいだけど、薬を抽出している間にお湯も冷めたし、問題ないよ。どこか痛いところとかない?気持ち悪いとかは?」
「特にないわ。それじゃあとは、団長が来るのを待つだけね。」
「そうだね。ラッセル卿夫妻が医師会に寄ってからオシニスさんのところに行くって言う話だったから、そちらと話をしてからになると思うよ。ラッセル卿達の面会は、明日からにしてもらったからね。」
「そうねぇ・・・。私としても、処分の話を聞いたすぐあとではそれなりに落ち込むだろうし、何よりフロリア様のことも心配だし、落ち着くための時間はほしいわね。」
こうして話している分には特に問題はない。あとはオシニスさんが来てから、処分の話が出たあとどう変わるか、それとも変わらないか、その辺りをよく見ておこう。
セーラが洗濯のためにシーツの入ったかごを抱えて部屋を出て行き、リーザと妻が他愛ないおしゃべりをしている時に、扉がノックされた。
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第113章へ続く